書き換え「許さず」/超党派で撤回要求
沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」で軍強制を削除した高校歴史教科書検定問題に対し、二十九日、宜野湾海浜公園で開かれた県民大会には、各政党の本部幹部らが多数参加した。十一万人が結集した大会の意義をそれぞれが高く評価、沖縄戦の史実をねじ曲げる検定の撤回を求めた。
民主党の菅直人代表代行は「『集団自決』で軍関与を否定した動きを許さないという県民の思いを強く感じた」との感想を述べた。大会の意義については「戦争を風化させ、ねじ曲げようとする一部の動きに、当事者が苦しい体験を勇気を出して発言した。多くの人々が集まったことは歴史的な意義があり、歴史の歪曲を止めるきっかけになる」と話した。
遠山清彦公明党宣伝局長は「県民が怒るのは、文科省が学問的、客観的に運用した検定制度と、戦争体験者の体験がずれているからだ」と指摘した。文科省には、同党県本部が四月に求めた県民参加による「沖縄戦共同研究機関」の創設を強く要望。沖縄戦の公正、客観的な検証を求めた。県民からの直接ヒアリングなど、検定制度の見直しも必要との認識を示した。
市田忠義共産党書記局長は「これまで日本政府も軍関与を認めていた。それを覆すのは許されない歴史の書き換えだ」として、国政の場で検定意見撤回に向けて働き掛けていく考えを示した。大会について「県民の平和へのエネルギーが一層伝わった。国民全体の問題として、党派を超えて、歴史の偽造は許されないという思いをますます強くした」と述べた。
社民党の保坂展人平和市民委員長は「教科書問題は住民虐殺や慰安婦問題などと同様に、戦争を客観的に見られるのかという歴史観全体の問題だ」と指摘。「県民の大きな声を、福田政権がどう受け止めるのか、週明けの所信表明に注目したい」とした上で、「他の野党と連携し、渡海紀三朗文科相への質問で、全面撤回の契機となる見解、発言を引き出す努力をする」と述べた。
県民の不満が「爆発寸前に」 知事、政府に配慮求める
仲井真弘多知事は二十九日の県民大会終了後、記者団の取材に応じ「私が初めて見たほど大勢の県民が集まった。ある種のマグマというかエネルギーというか、何かが爆発寸前にあるのではないかと予感させた大会だった」と述べ、沖縄戦の実相と異なる文部科学省の検定意見に対し、県民の不満が限界点にあるとの認識を示した。その上で検定意見の撤回に全力で取り組む意向をあらためて表明するとともに、「地方の意見に耳を傾ける、理解に努めるという、中央におられる人々の感性をもう一回磨いて、精妙にしていただく必要があるのではないかと思う」と指摘。政府に対し、県民感情に配慮するよう求めた。
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