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社説

救急搬送 体制整備は待ったなし(3月12日)

 総務省消防庁が、昨年一年間の救急搬送に関する実態調査をまとめた。

 医療機関から受け入れを三回以上拒否されたケースが、全国では二万四千件、道内でも二百三件あった。驚くべき数だ。

 初めての調査だから、比較はできないが、昨年が突出して多かったわけではないだろう。深刻な問題である。

 救急医療は人の命に直接かかわる。体制整備は待ったなしの課題だ。国も地方もそれぞれの役割の中で、打開策を見つけなければならない。

 搬送先の調整を行うコーディネーターを一定地域ごとに配置する施策が国に求められる。消防庁が厚生労働省にすでに申し入れている。厚労省は早急に取り組むべきだろう。

 自治体が行っている救急診療の「輪番制」に対する補助も、かつてのように国が行ってはどうか。自治体の中には財政難から事業を打ち切ったところもある。それも受け入れ拒否につながっているのではないか。

 受け入れ拒否は大都市に多いが、地方も自治体や医療機関が協力して、救急病院の人員配置など、体制整備を検討していくことがまず必要だ。

 患者の側にも改めなければならない点があろう。

 かかりつけ医を持たずに、出産間近になって救急病院に運ばれる妊婦がいる。妊娠後の経過が分からないままの出産にはいっそう危険が伴う。

 医療事故を心配する医師が、受け入れをためらう気持ちになることは、ある程度理解できる。

 軽症患者がタクシー代わりに救急車を呼ぶこともある。こうした患者が救急病院を忙しくさせている。

 受け入れ拒否の背景にあるのは、救急病院の減少や医師の不足だ。

 二十四時間体制で医師や看護師を配備する救急医療は、不採算部門と言われる。道内でも「救急告示医療機関」に認定されているのは二月一日現在で二百七十七施設。一年間で十五も減った。

 医師の不足はとくに地方で顕著だ。道内での人口十万人当たりの医師数は、旭川を中心にした上川中部地方の三百六人に対し、根室地方は八十九人。格差が広がっている。

 国は先の診療報酬改定で、勤務医の負担軽減策に向けて報酬を見直した。だが、これまで医療費を抑制したことが、医師不足の一因ではないか。

 わずかな引き上げ幅は、医師不足対策としては不十分と言わざるを得ない。中長期的に、勤務医の報酬をさらに見直すことが必要だろう。

 大学医学部の定員も見直すべきではないか。国は緊急医師確保対策として十年間に限って増員を認めているが、地域の実情によっては恒常化を検討してもいいはずだ。

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