村の先生残った 診療所廃止を回避 青森・風間浦
診療所は所長、看護師1人、准看護師4人、職員3人の体制。外来には1日約100人が訪れる。 同村下風呂地区の漁業男性(69)は10キロほど離れた診療所に週1、2回通う。「話に耳を傾けてくれるし安心できる。最高の先生だ。残ってもらいたいと、みんな思っていた」と拝むように語った。 同村は津軽海峡に面し、人口約2600人。県が進める医療再編計画で、風間浦、佐井両村の診療所は本年度末で廃止され、4月からは大間病院(大間町)に常勤医が集約されることが決まっていた。 ところが昨年12月、無医村への危機感を抱いた住民有志が大柳所長の独立開業を求める署名活動を始め、高校生以上の7割に当たる約1600人分が集まり、村に提出。大柳所長も「大変ありがたい」と前向きに受け止め、事態は行政、議会を巻き込んで急展開した。 2月、大柳所長は本年度限りで県職員を辞めることを決断。施設の利用についても、運営する一部事務組合下北医療センター(管理者・宮下順一郎むつ市長)が今月5日、むつ市の医療法人に運営を委託する方針を決め、4月開業に道を開いた。大柳所長はこの医療法人に所属する。 25日のセンター議会で関連議案が可決されれば、正式決定される。 青森市出身で自治医大卒の大柳所長は1995年、村に赴任して以来、65歳以上が30%を超える村の「かかりつけ医」として、地域医療を担ってきた。 大柳所長は「病気を治すという結果だけでなく、話を聞いて一対一で診ることができる。自分を信頼してくれた村に恩返しをしたい」と話す。 診療所では年間5000万―6000万円の赤字が発生。民間では安定経営の維持が不可欠となるが、「経営のことは医療法人と相談してやっていく。今まで通り医療を続けていくだけ」と気負いはない。 横浜力村長は「村民の思いを先生が酌んでくれた。県職員の身分を捨ててまでも村の医療に徹したいという先生の熱意に報いるため、村民みんなで支えていかなければならない」と話している。
2008年03月11日火曜日
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