「あれ食べた?」。岡山県北の美咲町近辺では、こんな問い掛けがあいさつ代わりになっている。町が一月に売り出した「卵かけご飯」のことである。
第三セクターが運営する卵料理店「食堂かめっち。」の看板メニューで、町内産の棚田米や卵などを使っている。地元出身で明治期を代表するジャーナリスト岸田吟香が、卵かけご飯を広めたとの説にあやかった。
評判は上々。町内外から大勢の客が訪れ、順番待ちの列ができるほどだ。気を良くした町は近く二号店を出す予定で、地域活性化の期待が膨らむ。卵かけご飯がなぜ、そんなに受けるのか。庶民感覚で楽しめる「B級グルメ」ブームの影響だろう。
B級グルメは広島市のお好み焼き、神戸市の「そばめし」など全国に広がる。岡山県でも備前市日生町のカキオコ、笠岡市の笠岡ラーメンなど人気が定着し、町おこしに貢献する例が増えている。
単なるブームではなさそうだ。関満博・古川一郎編「『B級グルメ』の地域ブランド戦略」は、企業誘致、地場産業再生に続く地方活性化の「第三の流れ」になりつつあると指摘する。理由は大量消費時代を経て、人々が地域に根ざした食に深い関心を寄せ始めたからだ。
成否の鍵は住民が握る。大きな産業化などあまり意識せず、地域の人が楽しみ、周りにその楽しさを振りまいていくことが大切だという。