東海道新幹線が開業した1964(昭和39)年10月にデビューし、今は山陽新幹線「こだま」となり今年11月末の引退が決まっている元祖・新幹線車両「0系電車」。車体の塗装はJR西日本500系新幹線を連想させるグレー系に変更されているが、6月からは東海道新幹線開業当時を再現した「白と青」になる。
写真は、鉄道博物館(さいたま市大宮区)に保存されている、オリジナル塗装の0系先頭車。今月末時点で残る0系電車は6編成(各6両)。3編成の塗装は変更し、残り3両は6月ころまでに順次、廃車となる。
車体の色が「白と青」に決まった経緯は、0系の設計に携わり国鉄副技師長も歴任した星晃さんが、米山淳一さんとの共著で出版した「星さんの鉄道昔ばなし」(JTB刊)に載っている。白と青は「飛行機をイメージした」色という。当時、日本に乗り入れていた米国の航空会社「パンアメリカン航空」(パンナム)の機体塗装だ。なるほど、先頭が流線型で営業時速が210キロだった「超特急」には、航空機のイメージが重なる。
白と青でデザインされた「ハイライト」のタバコの箱のエピソードも面白い。星さんによると、0系新幹線の色は「ハイラトの箱を置いて見ながら幹部が決めた」といい、色あせしない青色塗料を採用したという。
ちなみに0系は、1986年までに計約3200両もが製造された名車。東海道区間からの引退は99年のこと。今月15日のダイヤ改正で、東海道・山陽新幹線では最新型N700系が増発され、新旧の主役交代が進む。快適な新型車両の増発は歓迎だが、名車0系の引退が迫るのを実感するにつけ、私は複雑な思いがする。【木下豊】
毎日新聞 2008年3月11日