不動産・金融会社を経営していた父親の遺産約59億円を隠し、相続税約29億円を脱税したとして、大阪地検特捜部は11日、大阪市生野区中川西2、不動産・金融会社「東海商事」社長、清水初枝容疑者(64)=本名・李初枝=と妹で、同区桃谷4、会社社長、石井淑子(よしこ)容疑者(55)=本名・李淑子=の計2人を、相続税法違反容疑で逮捕した。相続税の脱税額としては過去最高。隠した遺産のほぼ全額が、現金のまま段ボール箱や紙袋に入れられ、清水容疑者の自宅に保管してあった。
関係者によると、04年10月、清水容疑者の父親が病死し、約75億円の遺産が長女の清水容疑者と四女の石井容疑者ら親族計8人に分割相続された。清水容疑者らは共謀し、遺産のうち約59億3000万円を隠して申告せず、相続税約28億6000万円を脱税した疑い。
清水容疑者は大阪国税局の査察(強制調査)に対し「父の遺産ではなく、自分で稼いだ財産だ」などと否認しているという。重加算税を含む追徴税額は約40億円になる見通し。
民間の信用調査機関などによると、清水容疑者の父親は1954年、大阪市生野区に「東海商事」を設立するなど不動産を中心とする計8社によるグループ会社を経営。大阪・ミナミの一等地に地上11階建ての自社ビルを所有するなど、一代で多額の財産を作った。
死亡する前の約10年間は病気がちとなったため、清水容疑者が事実上の経営権を握り、死後は父親の跡を継いでグループ8社の代表に就任した。ところが、清水容疑者らが05年に申告した相続遺産は約16億円しかなく、父親の資産形成の状況と比較して大きな差があったため、国税当局がマークしていた。
特捜部は同日、同国税局査察部と合同で、清水容疑者の自宅など計10カ所を捜索した。今後、押収した資料などを分析し、巨額脱税の全容解明を図る。【福田隆、田中龍士、藤田剛】
毎日新聞 2008年3月11日 12時08分 (最終更新時間 3月11日 15時55分)