救命センターへの受入照会、最大63回

 2007年に救命救急センターに搬送された約13万人のうち、救急隊が受け入れ先のセンターを探す際に最も多いケースで63回の問い合わせをしていたことが、消防庁が3月11日に発表した調査で分かった。11回以上の照会が802件、6〜10回が2,108件に加え、救急隊の現場滞在時間が150分を超えたケースも31件あるなど、3次救急レベルの受け入れ先を探すのに困難を極めている実態がうかがえる。

 調査は、消防庁が救急搬送時の受け入れ状況を調べるために国内807の消防本部に対し、07年中の救急搬送について▽救命救急センターへの搬送▽小児▽産科・周産期▽重症(3週間以上の入院加療が必要な傷病程度)以上―のカテゴリーに分けて調査した(転院搬送除く)。消防庁は同日、救急受け入れ困難の問題を解決するために設置している消防機関と医療機関の連携に関する作業部会に報告した。

 07年に救命救急センターや大学病院の救急部など地域で基幹となる救命センターに搬送された13万4,042人のうち、1回の照会で受け入れ先が決まっていたケースが80.1%と多数を占めたものの、4回以上かかっていたケースが5.8%(6,990件)あった。紹介件数が多かった消防本部があるのは大阪府で、最大照会件数は63回。次に東京都で47回、埼玉県で33回などがあった。
 救急隊の現場滞在時間は、「30分未満」が93.0%を占めたが、長くかかったケースでは「150分以上」31件、「120〜149分」42件、「90〜119分」150件があった。150分以上かかっていたのは、東京都で12件、神奈川県で7件、大阪府で4件あった。

 受け入れられなかった理由には、「(症状に対処できる設備やスタッフの不足による)処置困難」が24.7%と最も多かった。ほかには、「手術中、ほかの患者に対応中」21.2%、「ベッド満床」21.0%などがあった。

■1回の照会で8割が受け入れ先確保
 重症以上(搬送人数41万1,625人)と産科・周産期(同2万4,173人)、小児(同35万4,046人)のすべてのカテゴリーについて、「1回」の照会で80%、「2,3回」も含めると、95%が受け入れ先を確保していた。11回以上の照会があったのは、重症以上は0.3%、産科・周産期は0.2%、小児は0.1%で、最大照会回数はそれぞれ50回、43回、35回だった。
 現場滞在時間もすべてのカテゴリーで「30分未満」が約95%を占めた。

 都道府県別では、重症以上で11回以上の照会があったのは、東京が最多で614件、埼玉県129件、大阪府71件、千葉66件と続く。産科・周産期でも6回以上の照会があったのは大阪113件、東京112件、神奈川30件などが多かった。

 消防庁は「首都圏、近畿圏の大都市周辺部で照会回数が多く、選定困難事案が一定の地域に集中する傾向がある」としているが、有賀徹座長(昭和大学病院副院長)は「都市部は地方と比べて医療機関も多いため、救急隊が受け入れ先を探すために当たる医療機関も多いのは当然」と、単純に照会回数だけで比較しないで現場滞在時間や年次推移による分析も重視し、数字が独り歩きしないように注意を促した。

 受け入れられなかった理由は、重症以上では、「処置困難」22.9%、「ベッド満床」22.2%、「手術中、ほかの患者に対応中」21.0%だった。産科・周産期では「処置困難」21.5%に、「手術中、ほかの患者に対応中」19.0%が続き、「専門外」が13.5%だった。小児では「専門外」が25.2%と最多で、「手術中、ほかの患者に対応中」21.8%、「処置困難」16.1%が続いた。

■産科の照会回数、年々上昇
 産科・周産期の搬送について、照会回数が4回以上だったケースの推移を見ると、04年には225件と全体の搬送件数の1.9%だったが、毎年増加している。今回は1084件と、昨年から0.7ポイント上昇して全体の4.8%を占めた。


更新:2008/03/11 18:36     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。