3年9か月ぶり我が家「やっと無罪実感」…殺人・放火判決
無罪判決を受け、支援者の拍手に迎えられる片岸みつ子被告(5日午後0時57分、北九州弁護士会館で)=大野博昭撮影
「やっとこの日を迎えることができました」。2004年3月に北九州市で起きた殺人・放火事件で、5日、福岡地裁小倉支部から無罪判決を受けて釈放された無職片岸みつ子被告(60)は、約3年9か月ぶりにわが家に戻り、子供たちと夕食を共にして安堵(あんど)の表情を浮かべた。検察側に控訴断念を申し入れ、「取り戻した平穏な暮らしを壊さないで」と訴えた。
午後5時前、自宅に戻った片岸被告は「懐かしい」と玄関を見回しながら入り、真っ先に仏壇に向かった。被告が逮捕されて11日後に自宅で命を絶った夫、賢三さん(当時59歳)に「ただいま」と報告。正座して手を合わせ、「あなたが天国から祈ってくれたおかげで無罪になりました。あなたの無念を晴らすため、子供たちと片岸家を守っていきます」と伝えた。
居間に腰を下ろし、「やっぱりわが家は落ち着きます」と笑顔。長男の和彦さん(33)が「今夜は親子で川の字になって寝ようか」と呼びかけると「うれしい」と照れ笑いを浮かべ、「ようやく無罪を実感できました」と、ほっとした表情を見せた。
長女の典子さん(31)は「エプロンを着けて台所に立っていたころの母の姿を思い出しました。家族がそばにいるという平凡な幸せをつくづく感じました」と、喜びをかみしめていた。
自宅には親族が集まり、午後8時ごろから焼き肉を囲んで無罪判決と再会を祝った。