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2008年3月11日

◎県内東大合格者 競い合いが「やる気」引き出す

 東大の前期合格発表で、富山県が昨年より大幅に合格者を増やし、石川優位に傾いた流 れを再び富山優位に引き戻した。富山中部、高岡、富山の「御三家」のうち、富山中部が大きく抜け出し、金大附属、泉丘の「二枚看板」で合格者数をけん引した石川県に差を付けた格好である。富山県の教育現場で、実際に「石川に負けるな」などとハッパがかかっていたとは思わないが、負けたくないという思いが、さまざまなかたちで教師から生徒に伝わり、やる気を引き出したのだとすれば、大いに歓迎したい。今の受験生は、学力に不安のある「ゆとり教育世代」だけに、切磋琢磨の重要性はこれからますます高まるだろう。

 東大、京大などの超難関校に安定的に合格者を出すには、生徒と教師が高い志を持って 、競い合う環境が必要である。石川県の東大合格者は以前、金大附属が孤軍奮闘していたが、いわゆる学校版マニフェストで「東大合格十人以上」を掲げた泉丘が一昨年、一挙に二十人の合格者を出し、一年や二年で成果が出るはずはないと冷ややかに見ていた学校関係者を驚かせた。

 学力向上には、何より学校と生徒の意識改革が必要である。泉丘は明確な目標を掲げて 教師を鼓舞し、集中的な補習授業と添削指導、質と量を伴った宿題を巧みに組み合わせ、生徒の奮起を促した。泉丘の成功は、石川県のみならず、富山県の進学校の大きな刺激になったのは間違いない。泉丘の背中を追う石川県の公立校のなかには、成績別の補習や試験を設定したり、中間、期末試験を木、金、月、火と週末をはさんで長めに設定し、たっぷりと試験勉強させるなど、工夫を凝らすところも出てきている。

 むろん東大、京大の合格者数がすべてではなく、金大附属の場合は、国公立医学部の合 格者が多いという事情もある。東大、京大の合格者数をもって学校の優劣を付けるつもりはないが、学校の踏ん張り、教師の頑張りを測るバロメーターの一つであるのは確かだ。受験戦争をあおるなどという短絡的な批判は、競い合うことの否定につながり、若者たちの可能性の芽まで摘んでしまう。受験は、ゆとり教育世代の子どもたちを強く鍛える貴重な機会でもある。

◎小松空港の安全強化 縦割りの弊害なくしたい

 小松空港で日航機が誤って滑走路に進入した問題で、国土交通省が再発防止策として導 入の検討を始めた誘導案内灯は、全国の空港では既に設置が進んでいる機能である。

 自衛隊との共用空港については防衛省との協議が必要のため、案内灯の整備が進んでい なかったようだが、安全確保の面からいえば、一本の滑走路を自衛隊機と旅客機が使用する小松のような空港にこそ優先的に導入されていい。防衛省と国土交通省の縦割りの弊害が安全上の支障とならないよう両省は問題意識を共有してもらいたい。

 小松空港の誤進入トラブルは、副操縦士が「暗くて停止線が見えなかった」としている 。営業路線を副操縦士の昇格訓練コースにしていたことなど見直すべき問題点は多々あるが、単純ミスや判断の誤りを防ぐには、前にも指摘した通り、ひやっとした時に手を打つと同時に、ミスが生じにくい仕組みを構造的に講じていく必要がある。

 パイロットと管制官の聴覚によるやり取りを補うためには視覚に訴える支援システムが 大事である。停止位置の誘導案内灯は視認性を向上させ、夜間や悪天候時のパイロットの負担軽減につながるはずである。

 羽田空港では滑走路増設に伴う発着枠拡大へ向け、地上走行する航空機を信号で交通整 理する新システムの導入が検討されている。滑走路誤進入が各地で相次いでいることを考えれば、小松など他空港への導入も今後の検討課題となろう。

 誘導案内灯は全国九十四飛行場のうち二十二施設で設置されている。国交省は小松空港 については土地を所有する防衛省と調整し、新年度からの導入を目指すという。自衛隊が滑走路を管理する空港では新規航空路線の設置など運用面で防衛省との話し合いが必要となるが、心配なのはそうした省同士の調整が見えない壁をつくり、空港整備の遅れにつながりかねないことである。

 自衛隊機と旅客機では機体の性能から離着陸の方法も異なる。共用という状況は、他空 港とは異なるリスクが潜んでいることを防衛省と国交省は認識する必要がある。航空自衛隊が担う管制業務を含めて意思疎通を徹底してほしい。


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