ベロンベロン一歩手前まで酔っぱってたし、このひとたち好きだ！という気持ちが振り切れて、ベタ凪のような多幸感に支配され、車座の真ん中で大の字になって眠ってしまいそうだったので、冷たい風に当たる必要があったのです。
わたしの真っ赤な顔と千鳥足を心配してくださった女性陣が「わたしも行く」「わたしも」「行こう」と立ちあがってくださり、正確な人数は憶えてないんですが（なにせ酔っぱらってたもので……）おそらく３、４人で大通り沿いの＜ナチュラルローソン＞に向かいました。
店にはいった途端、わたしのなかでなにかが弾けました。
もう、目につくものを片っ端からかごに入れていきました。
おにぎり、パン、チーズ、バナナ、みかん、スナック菓子、チョコレート、ジュース、牛乳、チーズケーキ、アイス――。
「かごいっぱいになったんで、とりあえずここに」とひとつ目のかごをレジに置いて、ゲラッゲラ笑いながらふたつ目のかごを潰しにかかる（？）と、五反田団の女優さんたちもゲラッゲラ肩をぶつけ合いながら
つぎつぎと食料をつかんでかごに入れました。
最終的に、かご３つになったのかな？　バーコードリーダーがピッと音を立てるたびに笑いがこみあげ、彼女たちに「うわー大人買いぃ！」「大人買いだよ大人買い！」と褒められたことに気を良くして、わたしは店員さんに「このお店の最高記録ですか？」と訊いたんですが（ハズカシー！）、どの世界（？）にも上には上がいるもので、一ヶ月分の食料と日用品をまとめ買いする近所のおじいさんにはかなわなかったみたいで、ちょっぴり残念でした。
わたしたちは（といっても、いいよね？　あのときはほんとに一体感があったんだから……）両手にローソンのレジ袋をぶらさげて、ヒャー！　ゥワー！と奇声を発しながら夜道を走って帰りました（帰った、といっても、いいよね？）。
女性陣が畳の上に戦利品（なんの戦いだ？）を並べると、五反田団の男性陣は目を丸くしました。
正座して両手を前につき腰を浮かして戦利品（だから、なんの？）を眺めてくださった団長（と呼んでも、いいですよね？前田さん）の頭のつむじに、わたしは前田司郎のカリスマ性を垣間見た気がしました。
思えば、行きつけの店がいっぱいで、この部屋に飲むことになったとき、前田さんが漏らした言葉に、わたしは無意識のうちに演出されていたのです。

「それも面白いか……」

●大人買いの結果を眺める、前田さんとつむじ

●みかんの置き場はペットボトルのフタの上……大人買いの果て

撮影はすべて柳美里（「今日のできごと」より）

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