現在位置:asahi.com>文化・芸能>コラム>小原篤のアニマゲ丼> 記事 「児童ポルノは…」書店員の衝撃の一言2007年11月22日 実話です(いつも実話ですけど)。
98年6月、私は東京・高田馬場の書店に行きました。国会に上程された「児童買春・児童ポルノ禁止法案」についての取材です。「ポルノか否かの線引きが曖昧(あいまい)」との理由で法案の手直しを求めた日本弁護士連合会や出版業界団体、それに反論する提案者の議員や警察庁担当者などから話を聞き、加えて「児童ポルノ」(にされようとしているもの)を扱っている書店の声も聞こう、との狙いでした。 事前にアポは取らず飛び込み取材。1軒目は40代くらいの店員さん(男性)。日本人の女の子の名前がついた写真集を指し「ホントは東南アジアの子。法律ができたら? 問屋に返品しますよ」。 そして2軒目。絶版となった写真集(1冊数万円)がレジ奥のケースに飾られているその店で、30代とおぼしき店員さん(男性)が取材に応じてくれました。 「法律ができたら? もう売れないから、処分することになるのかな」 「でも出版業界や日本弁護士連合会から、児童ポルノの定義が曖昧だと異論も出てるんですよ」 「ああ、弁護士さん? 好きだからね。あと多いのは医者だね」 「……?!!?」 絶句。立ちながらメモを取っていた手が固まりました。 「いや、日弁連が反対しているのは別にそういう理由ではなくて…」と言ったような気がしますが、記憶が定かではありません。あまりに意表を突く言葉に、頭の中が真っ白になってしまいましたから。 店員さんは、別に「ジョークをかましてやれ」といった風情ではなく、あくまでナチュラルに真顔でさらりとおっしゃいました。「よく買いに来るんですか?」とツッコめばよかったと後になって思いましたが、その時は、背中から飛んできた球が後頭部を直撃したような衝撃で何も考えられず……。 法案は翌年、「国民の権利を不当に侵害しないよう留意する」とする条項を加えるなどの修正を経て、成立、施行されました。以来、いろんな職業の人がこの法律で摘発され、新聞の社会面をにぎわせています。そんな記事を見るたびに、あの日の書店員の衝撃の一言を思い出すのです。 プロフィール
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