2008年3月9日

試合前のクラブハウスに、その巨体（ただし横に）と飛距離で有名な、
プロゴルファーのジョン・デーリー氏らが訪れて、いつも以上に賑やかになりました。
デーリーさんのトレーナーが持ち込んだ「手品」に、選手がみんなはまってしまったのです。
それは、一人を椅子に座らせて、その四方を囲んだ４人が、指二本ずつだけで、座った人を
持ち上げる、というもの。
日本では一時期流行った、「気のパワー」で上がる、というあの遊びです。
僕は小学生の時にやった覚えがあります。
とにかく試合の直前まで、
「うわーっ！すげーっ！上がったーっ！」
「今度はあいつを上げてやれ！」
「次誰？座るの誰？早く！早く！」と、異様な盛り上がりを見せたのでした。

アメリカ人って素朴・・・。

僕もデーリーさんから「座れよ〜！」と言われたものの、
こんなちびっこいものを上げても面白くなかろうと、あえて辞退しました。
本当は、力任せに上げられて、そのままふっ飛ばされて怪我をするのが怖かったのです。
加減、という言葉を知らない人々です。自分は自分で守らなければいけません。

今日の試合はボロ負け。敗因は、試合前の「気」の使いすぎですか？

フロリダ州クリアウオーターにて　田口壮　

2008年3月8日

遠征免除。午前中の練習で帰宅しました。
居残り組の中にはいつも、ジェイミー（モイヤー・投手）がいます。
４５歳、チーム最年長の彼は、遠征にはまず帯同せず、今日は
マイナーのゲームで投げて、調整していました。
長時間のバス移動をさせないなど、球団側のバックアップもあるのでしょう。
地道な体操も人一倍時間をかけて、細心の注意を払って
コンディションを作り上げていく、メジャーが誇る名投手の一人です。

モイヤー、と聞いて「おっ」と思った方は、田口通。
僕のメジャーデビュー戦の、まさに対戦相手が、当時マリナーズのジェイミーでした。
のらりくらりと交わすような頭脳投球に惑わされ、まったく野球をさせて
もらえなかった思い出は今も鮮烈で、去年フィリーズ戦で彼から打ったヒットは、
僕にとってひとつの壁を越えたような気持ちにさせてくれたものです。
フィリーズに行く、と決まったとき、真っ先に思い浮かんだのが彼でした。
チームメイトになれたことを、とても誇らしく思っているのです。

近年養子を一人迎えた、７児の父。白髪交じりの髪をぴちっと撫で付けたその姿は、
どこの銀行マンか、と思わせるような風貌です。
フィリーズには僕より年上が２人いて、ジェイミーと、トム（ゴードン・投手・４０歳）、
その彼らの落ち着きぶりといったら、他の選手がみんな、彼らの子供に見えてしまうほど。
３番目の僕は、若い組に自分を入れるほどには図々しくもなく、
かといって、上の二人に属するには、「若い自分」の偶像を捨てきれないのです。

子供の頃、４０近い人はみんな、「大人」以上に「老けた人」でした。
今、自分がその年齢になり、さらに年上の選手が頑張っているという環境が、
なんだか不思議でたまりません。

フロリダ州クリアウオーターにて　田口壮　

2008年3月7日

タンパベイ・レイズ戦。試合前に岩村選手と話していたら、
「今日は１４回までですよ〜！」と知らされました。
レイズの試合が雨で流れることが多く、投手の調整が遅れているために、
１４回までの延長を申し入れてきていたのです。
こういう大切な情報を、僕は絶対に正規のルートで知ることがありません。
へたするとチームの大事な話を、ヨメから教えてもらったりします。
「何でそんなこと知っとんねん！？」
「何でそんなこと知らないの！？」と
何度びっくりした顔を見合わせたことでしょう。
それでもここまで大事故なくやってこられたんですから、
つくづく運のよさを感じます。

試合は先発して、７回で交代。
１４回まで待つんやなあ、と腹をくくっていたら、
チャーリー（監督）が、
「帰っていいよ！お疲れさん！」と声をかけてくれました。
早上がりの３人だけを乗せて、バスは一路、クリアウオーターへ。
なんという贅沢。なんという幸せ。
しかも明日は遠征免除。
これまで２回とも、遠い遠征に限って免除なのです。
監督に気を遣っていただいているなあ、と感謝。

「運がいい」というのは、その多くが、
まわりに恵まれている、ということなのかもしれません。

フロリダ州クリアウオーターにて　田口壮　

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