東京都町田市で06年に義父を殺害し自宅に放火したとして、殺人罪などに問われた男性(43)の控訴審判決が10日、東京高裁であった。植村立郎裁判長は、1審・東京地裁八王子支部の無罪判決(07年7月)を支持し、検察側の控訴を棄却した。植村裁判長は「当時、男性はリタリンによる著しい幻覚妄想状態に支配され責任能力が欠如していたという疑いが残る」と述べた。
判決によると、男性は06年1月13日、70錠のリタリンを短時間に服用後、電気ドリルやナイフなどを使い、同居していた義父(当時69歳)を刺して出血性ショックで死亡させ、自宅に放火した。
公判で、検察側は「リタリンが誘発する精神疾患で著しい幻覚妄想状態だったが、人を殺害したという認識や善悪を識別する能力はあった」と主張。弁護側は「善悪を識別して行動する能力を完全に失っていた」と控訴棄却を求めていた。
植村裁判長は「男性には行動をコントロールする能力はあった可能性がある。だが善悪などを識別する能力を欠いていた疑いは払しょくできず、(心神喪失の疑いが残るとした)1審判決の判断に誤りはない」と指摘した。
弁護人の南部憲克弁護士は「投薬管理もできない中毒状態の男性に、医師がリタリンを大量処方したのが原因。ずさんな処方をする医師は後を絶たず、チェックする仕組みを早急につくる必要がある」と話している。【精神医療取材班】
毎日新聞 2008年3月10日 19時21分 (最終更新時間 3月10日 19時26分)