国民と医療・福祉関係者の大同団結で「医療・介護再生プラン」を実現しよう!−などをスローガンにした全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)の第38回定期総会が3月6〜8日、横浜市内で開かれた。各都道府県から600人を超える代議員らが出席。社会保障の改善・拡充に向け、さらなる前進を▽人権を守り抜く地域医療の強化に向けて▽介護事業と運動の発展のために−などの12項目を重点目標とする運動方針案などを採択し、「崩壊の危機にある日本の医療・介護制度を再生する」ために組織が一丸となって取り組むことを確認した。また、辻井喬氏(セゾングループ元代表、詩人・作家)が記念講演した。
無駄をなくし社会保障へ
全日本民医連は今回の総会に、医師や看護師などの養成数を増やす▼診療報酬を適正に評価する▼医療保険制度を改善する▼公費医療制度の充実を行う▼予防医療を充実する▼「介護の社会化」の再構築を−の6点を具体的な要求とする「医療・介護再生プラン」を提案した。同プランの実現には「医療構造『改革』の抜本的な見直しも欠かせない」として、今年4月から始まる予定の「後期高齢者医療制度」の中止・撤回をはじめ、厚生労働省が進めている療養病床の削減計画を見直し必要な療養病床を確保することなども盛り込んでいる。
また、医療・介護の再生には「財源の確保も不可欠」なことから、同プランでは財源にも言及。欧米に比べて高い薬剤費や医療材料費を適正に評価して「医療費の無駄を省く」◇応能負担を原則に所得の高い層の保険料を引き上げ、大企業を中心に法人負担を引き上げる◇軍事費を削減し、無駄な公共事業の削減で社会保障に国の予算を投入する◇負担能力に応じた税制改革を行う−の4つを示し、「医療崩壊といわれる日本の医療・介護を再生し、国民が安心して医療や介護を受けられるようにする」ために、国民と団結して同プランの実現に取り組むことを確認した。
患者の受療権など守ろう
3日間の総会では、医師不足や地域医療の崩壊、救急医療問題など多様な現場の課題について分散会でも討議した。
沖縄県の看護師は、本年度の救急車の受け入れが昨年度より500件以上も増え、多い月では250件の受け入れがある実態を示し、「背景に受診抑制がある」と指摘。無保険のため受診を我慢していた60歳代の女性が搬送後に亡くなった事例をはじめ、心肺停止状態で搬送される患者が少なくない中、その4割以上を70歳以上の高齢者が占めているとして「受療権を守る医療運動が大切」と話した。
また、福岡県の医師は、若者の健康悪化が進んでいる事態に触れ「正規職員は長時間労働、非正規は無権利状態で健康保険にも加入できない。病気が貧困に直結し、這(は)い上がれない若者をどう支援するか検討が必要」と強調した。
総会では、分散会の質疑も踏まえ、12項目を重点目標とする運動方針案を採択。「社会保障の改善・拡充に向け、さらなる前進を」では患者の受療権を守り抜く実践、「人権を守り抜く地域医療の強化に向けて」では医療安全・医療の質の向上、「介護事業と運動の発展のために」では「24時間365日」・「最後まで安心して」にこたえる介護事業の展開などを進めることで一致した。
「平和こそ社会の礎」
総会初日の6日には、セゾングループの元代表で詩人・作家として活躍する辻井喬(本名・堤清二)氏が記念講演。辻井氏は、日本芸術院会員・日本ペンクラブ理事などを務めるほか、「マスコミ九条の会」の呼び掛け人でもあり、講演では、憲法9条をめぐる情勢などを語った。
辻井氏は、「平和主義と主権在民が憲法を構成する2つの思想的な柱」と強調。日本の産業は、鉄鉱石・天然ガス・石油などの原材料を圧倒的な比率で輸入に頼っていることを挙げ、「平和でなければ、日本の経済はもたない。多くの経済人との話でも『戦争はまずい』という認識で一致している」と、平和こそ社会の礎になると訴えた。
さらに、食糧自給率が先進国の中で極めて低い日本にとっては「戦争になると、食糧が抑えられ、飢えに見舞われることになるだろう。食糧は、国民生活の基本だが、この点をとっても平和が維持されないと日本はやっていけない」などと指摘。「平和主義を明記した世界に冠たる9条が果たす役割を守っていくことが不可欠」と訴えた。
更新:2008/03/10 10:05 キャリアブレイン
医療ニュースアクセスランキング
※集計:3/4〜3/9
医療ニュース動画
08/01/25配信
高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。