◎緊急消防援助隊 自衛隊と連携し迅速な移送を
大規模災害の際に全国から被災地に赴く緊急消防援助隊について、被災地の知事に、臨
機応変に援助隊の移動を指示する権限が与えられる「消防組織法」改正案が今国会に提出された。あいまいだった移動指示権が明確化されたことは、援助隊の機動性向上につながろう。ただ、能登半島地震で隊員移送の際、道路寸断などで遅れをとったケースもあったとの指摘もあるだけに、迅速な救援活動に当たるには、空と海で大量輸送できる自衛隊との連携が不可欠である。
昨年十月に石川県で行われた緊急消防援助隊の中部ブロック合同訓練では、自衛隊の輸
送ヘリや輸送艦に、消防隊員や車両をのせて被災地へ運ぶ初の移送訓練が行われた。自衛隊と消防が一体的な救援活動をするためにも、緊急時の移送システムについて消防本部レベルでち密な連絡体制を確立しておきたい。
緊急消防援助隊は、阪神淡路大震災を機に、大規模災害での広域援助体制を構築するた
め平成七年に創設された。昨年四月現在で全国の消防本部に三千七百五十一隊が登録されている。石川県、富山県はともに六十隊で、能登半島地震では富山からも二十六隊が派遣され、福井、新潟豪雨、新潟県中越地震では石川や富山の援助隊が活躍した。自治体消防制度が始まって六十年の節目となり、広域連携が求められる中で援助隊の存在意義は高まっている。
援助隊の移動では、過去にも自治体と消防庁が協議し、必要と判断した場合は、最初の
受け入れ地から別の被災地に移るケースはあったが、意思決定に時間がかかる面もあった。知事に移動指示権が与えられれば、被災先での迅速な部隊運用が期待できる。
しかし能登半島地震でも、基幹道路となる能登有料道路が一部区間で通行できなくなっ
たように、大規模災害であればあるほど肝心の輸送が滞る場合が予想される。遠方から被災地に向かう緊急援助隊の足として、空と海の大量輸送手段を持つ自衛隊との協力は欠かせない。
消防庁は都道府県に、自衛官を常駐配置するなど危機管理体制の拡充を求める方針だが
、移送体制を含め初動対応を向上させる意味でも、日ごろから有事を想定した消防と自衛隊の訓練を入念に実施したい。
◎中国野菜の輸入減 揺さぶりにおびえまい
農林水産省によると、中国産野菜の輸入量が急減している。中国側が検査を強化してい
ることに加えて、日本の食品関係業者が敬遠したことが響いたものとみられているが、その背景に一月末に発覚した冷凍ギョーザ中毒事件をめぐる日中対立があるのは明らかだ。
検査を強化したことが主たる原因だとすれば、自国での殺虫剤混入に否定的な主張をし
ている中国側が、安い中国産への依存を高め、自給率が低下している日本側の足元をみた揺さぶりだとみられなくもないため、ここでおびえてなるまい。
その理由はただ一つ。日中双方が腹蔵なく協力し、情報をフェアに交換することによっ
て混入の真相を解明していくことを邪魔することになるからである。
真相の解明が遅れ、輸入の減少が長引くと、ストックが減り、その影響が食品関係業者
や家計を直撃するかもしれない。が、輸入減少に悲鳴を上げて、問題の殺虫剤がどこでどのようなわけで混入したのかの真相究明をあきらめるようなことになっては両国のためによくない事態収拾になってしまう。
それにしても二月の第一週から第三週までの三週間の輸入量は前年同期に比べて約四割
も減っている。BSE問題で牛肉をめぐって日米がもめたとき、それでも米国は規制の緩和や輸入の再開をしつこく求めてきたのとは正反対ともいえるように映る中国だ。
日本の野菜自給率は一九七五(昭和五十)年に100%を割り、現在は80%を切った
ともいわれる。そうしたことから、冷凍ギョーザ中毒事件を「追い風」と受け取り、国産野菜の増産に結びつけたいとする主張も出てきたが、それにはまず第一に作り手を増やさねばならない。その上、高度な栽培技術が要る。耕作放棄地をよみがえらせることも不可欠である。あれやこれやで100%自給はムリだといわれる。
中国は輸出で所得を増やしたいし、日本は輸入して国内での不足を補いたい。真相究明
に努めるとともに、人手を増やして検査を強化し、輸出を減らさないようにするのが商売というものである。中国にそう教えるのも業者の仕事だ。