眠かろうが、寒かろうが、やっぱり現場は楽しい!

「東京マラソン2008」、取材録(前編)

馬場 一哉(2008-03-04 11:40)
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 2月13日から約20日間にわたり、お送りしてきた「特集・東京マラソン2008」では、男女2名のランナーにスポットを当てた。トップアスリートではなく、あえて市民ランナーにスポットを当てた理由に関しては、記事「レースに出るのが怖かった……」の冒頭で触れているので、そちらを参照してほしい。

 特集は、まず、ランナー2人の紹介記事から始めることになった。それぞれを前編・後編に分け、4日間にわたり記事を掲載。その後、2人のトレーニング風景の動画がTV班から届けられた。そして迎えた大会当日には、レース終了後、客観記事を1本、および写真記事を3本掲載。そして、翌週、ランナー 2名から、リポート記事が届けられた。

 編集部発の記事で、ランナーを客観的に紹介し、その後、彼ら自身に主観記事を書いてもらうという流れは、まずまず試みとしては良かったのではないかと自己満足している。また、TV班が作成したドキュメンタリーもなかなかの力作だったのではないかと思っている。

 さて、これで特集自体は終了となるわけだが、社内から、まとめ記事を求める声が上がってきた。あらためて、1本目の記事から眺めていくと、たしかに尻切れトンボの感はある。そこで、特集の最後に、私見を交えた取材録を書いてみようと思う。

撮影技術の未熟さを思い知らされる

 当初、企画段階では、「サイト上で、東京マラソンを走り、かつ記事を書いてくれる市民記者」を公募する予定だった。しかし、東京マラソンの参加権を持ち、かつ自発的に記事を書いてくれる人が現れる可能性は低い。過去の経験からそう直感し、このままでは企画倒れになると判断。急遽(きゅうきょ)、編集部サイドでランナーを探すことにした。

レース後、ともに走った仲間として握手を交わした生田さん(右)と真鍋さん(左)=2月17日、都内で(撮影:馬場一哉)
 そこで、記者は前職で世話になった陸上に造詣の深い編集者Sさんに相談をしてみることにした。

 すると、「人材はたくさん知っている」との返事。さらには、「どういうタイプがいい?」と質問された。記者はそのSさんを全面的に信用しているので、あえて甘える形でこう答えた。

 「Sさんがメディアへの露出に適正と考えるランナーを2名」

 その結果、マラソンに関するさまざまなエピソードを持ち、かつ、紙面栄えのする男女2名を紹介してもらえることになったのである。

 それが記事で紹介した生田洋介さんと真鍋未央さんというわけだ。生田さんは、かつて、テレビCMのモデルをやっていたという経歴を持ち、また、真鍋さんはマラソン本のモデルとして、写真が表紙に使われたこともある。ともに、高身長でスタイル抜群と、一時的な露出で終わらせてしまうには惜しい人材だと思った。

 東京マラソン前の取材でもっとも苦労したのは生田さんの写真撮影。編集部・小宮山さんの記事「マラソンが目標になった瞬間」に使った横断歩道上での写真だ。生田さんは「サラリーマンランナー」の代表という形で扱いたかったので、ランニングをしている写真や顔写真だけではなく、ビジネスシーンにおける日常の姿もおさえたかった。さらに、そのスラッとした体形を印象付けたかったので、単体ではなく、群衆の中でたたずんでいるような写真にしようと考えた。そこであのような写真になったわけだが、三脚を持っていかなかったので、まわりの人々を効果的に流すのに、かなり苦労した。

 記者の持っているレンズは口径の小さい安物であり、そもそもぶれやすい。さらに、10分の1以下のシャッタースピードで手ブレさせない技術は、残念ながら持ち合わせていない。そのため、何度も撮り直しをするはめになった。ぶれなかった写真もあったが、生田さんの前に人がかぶってしまっているなど、なかなか思うような画が撮れなかった。記事に掲載した写真も、一見すると気にならないかもしれないが、実際はけっこうぶれている。まだまだ修行が足りんなと思わされる撮影となった。

偶然撮れた東国原宮崎県知事の写真

 東京マラソン当日の朝は、TV班の橋爪さんが真鍋さんに密着、萩原君が生田さんに密着した。記者も、生田さんとの集合場所に駆けつけた。時間は7時半とかなり早い。眠い目をこすりながら、待ち合わせ場所である新宿駅西口に到着すると、どうもいつもと雰囲気が違う。記者がいつもその場所で目にするのは、スーツを着たビジネスマンやOLたちが足早に闊歩(かっぽ)しているシーン。しかし、この朝、駅構内はどこもかしこもトレーニングウエアを着た人々でごった返しており、さらにエアーサロンパスのにおいのようなものが充満していた。

 ストレッチをしている人々の間をすり抜けながら、スタート地点に向かう。歩くほど人が増えていった。彼らからは一様に興奮した様子が伝わってくる。それを感じ、記者の心も高ぶり始めた。そして、思う。今日、ここを走れるランナーたちは幸せだなと。その日、主役である彼らがなんだかうらやましく思えた。
スタート地点は歩く隙間もないほどの混雑ぶりだった(撮影:馬場一哉)

 スタート地点の群衆をかき分けながら、無心でシャッターをきっていると、突然、ファインダーの中に東国原英夫宮崎県知事の顔が飛び込んできた。写真記事「東国原知事も走った!」で掲載された知事の写真は、ほとんど偶然撮れたような1枚だ。何しろ、人が多すぎて、誰かを狙って写真を撮ることなど、不可能に近いのだ。そんな状況なので、生田さん、真鍋さんを見つけ出すことなどできるわけもなく、結局、スタート地点では、彼らに会えずじまい。

 あきらめて、ライン最前列に行くことにする。そこで、スタートの瞬間をうまく撮れそうなカメラポジションを見つけ、待機。しかし、しばらくするとスタッフがやってきて「そこからどいてください」と言われる。誰の邪魔もしていないし、いいじゃないか、別に。そう思いながらも従わざるを得ない。やむなくそこをどくと、同じようなところに待機しているカメラマンを数名発見。なぜ? と思うとともに、彼らが大丈夫なら自分も大丈夫なはずではないかと考えた。スタッフに言う。

 「あのカメラ位置が許されるなら、私の位置も良いのでは?」

スタートエリアで芸人の猫ひろしを発見(撮影:馬場一哉)
 この日、こういうやり取りを何度もしているのだろう。スタッフは無言で記者のところから立ち去り、そのカメラマンたちのところに行った。そして、彼らをどかせることにも成功していた。やれやれ……。

 ちょっと悪いことをしたなと思いつつ、仕方がないので、場所を移す。

 眠く、寒く、そして、重い機材を持ち歩く。体力的にはけっこうしんどい。それでも、やはり、現場は楽しい。そんなことを考えながら号砲が鳴り響く瞬間を待ち続けた。

(つづく)


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