白痴日記

2008-03-04 何ヶ月ぶりのエントリーだこれ

[]小学生はガンガン犯行予告とかすればいいと思うよ

<

炎上上等で小学生はガンガン犯行予告とかすればいいと思うよと暴論をぶつために久しぶりにエントリーを書いてみる。

これがこれこそが暴論ってやつですよ。OK?

犯行予告ってそんなに悪いことなの?
二つの観点から考えてみたい。簡潔に書くよ。

まず第一に道徳の問題。
悪意ある犯行予告と悪意のない犯行予告の見分けは付かない。
そんなものは文脈によるんだよ明らかに。俺はここで次の瞬間に犯行予告をすることができるけどそんなものに悪意があるとは認められない。文字列に悪意が籠もってて、特定の文字列を理由に非難されるとかわけわからん、小説とか書けないじゃん。

次にコストの問題。
これは二つにわけられる。統治者としての問題と被統治者としての問題。

まず前提として匿名の犯行予告に情報量はまったく無いことを注意したい。犯行予告をした後に実際に犯罪があったとして、犯行予告と相関が取れるとは思わないということだ。これはつまり犯行予告によって実際に犯行が起こる確率が上がるのかという問題である。調査しないと分からないけど、おそらく有意には言えないはず(ちょっとぬるい言い方だけど勘弁)実行される犯行予告よりも実行されない犯行予告のほうが圧倒的に多い。後から書くように無価値な犯行予告を氾濫させれば情報量はさらに下がる。

次に統治者としての問題として考える。
犯行予告を無視した上で犯行が行われた場合、責任を取らされるから犯行予告に対処するというような見方もできるけど、これは間違ってる。匿名の無意味な情報に対処する必要は統治者には求められないからその責任は回避できるはずだ。責任が回避できるはずであれば、それは取り締まる理由にはならない。
責任が回避できるはずの問題であれば事後的な責任を理由にすることは出来ないというのは自明ではないが、ゲーム論的に考えれば納得がいくだろう。統治者が実際に責任を取るべき状況(ここでは犯行予告後に犯行が実行された場合)に直面したとき責任を取っても取らなくても利得が変わらないのであれば、統治者は責任を取らないであろうと予測できる。そしてそのことを被統治者も見抜いて行動をするだろうということだ。換言すると、責任が回避するオプションがあるならば、その責任を全うすることにコミットメントすることはできない、ということになる。これが責任が回避できるはずの問題を、事前の対処における理由にはできないというロジックだ。
結局なぜ取り締まるのかと言えば見せしめでしかない。見せしめとは確率的に薄めたコストを被統治者に負わせてそのインセンティブを操作する目的を持った処罰だ。
このような見せしめの効果が出るのは後で書くように被統治者がマトモだからだ。

最後に被統治者としての問題として考える。なぜ私達は犯行予告をしないのかということを考える。
それは当然コストに見合うようなリターンが得られないからだ。ノーリターン、ローコスト。いい大人になれば犯行予告なんてしたって何が面白いのか分からなくなってくる、リターンなんてほとんど無いに等しい。一方で確率は低くてもそれで捕まる可能性があるならまともな被統治者は犯行予告をしないことを選び取る。

つまり、統治者がコストをセーブしながら確率的に少数の犯行予告を見せしめ的に処罰することと、被統治者がその確率的な処罰を予想してリターンと見比べたとき犯行予告をしないで置こうという判断が相互補完的に成立している状態が今ある(ナッシュ均衡

ここまでは現状認識。さて、犯行予告について考えよう。犯行予告をするやつは馬鹿なのだろうか?
まあ、馬鹿だろうなあ、被統治者の生き方としては。せいぜいがストレス発散になる程度のことで捕まるリスクを冒すわけだから。確率的に薄まってるコストを正確に認識する(これが本当に重要な大人としての能力である、法規制に対する態度とでもいうべきか)という判断能力を持っていないガキだともいえる。

ただし初めに見てきたように犯行予告には悪意も情報もない。
悪意も情報もないのに捕まるとか意味わからん。いや、実はわかるけど。
単にそれが規範、別の言葉で言えばナッシュ均衡になってるだけでしょ。

これは唯一の均衡ではなく、揺さぶれは動く均衡だ、みんながみんな一斉に犯行予告をし始めれば、これはもう対処のしようがないわけだから別の均衡点に移るしかなくなる。その均衡点とは統治者は何も対処しない、被統治者は犯行予告しまくるという均衡だ。

これが良い均衡かどうかはわからんのだけど、一ついえることは誰も犯行予告で捕まることが無くなる。無駄に捕まるやつがいなくなるなら、それはそれである意味いい感じなんじゃないかなあと思う。しかもこの均衡の先には、統治者は何もしない、被統治者もむやみに犯行予告をしないという明らかによさげな均衡も存在する(まあこの均衡は安定的じゃなさそうだけど)。
反論としては悪意がのさばるとか社会が混乱するとかいうのがあると思うんだけど、どちらもそれほど説得力はないと思うよ、あらためて議論を追って貰えればわかると思うけど。

黙ったまま指をくわえてみていれば、子供達にとってインターネットは閉じていくしかない、フィルタリングとかなんとかでさ。僕はそれってあんまり良くない傾向だなあと個人的には思う。被統治者の一人として子供達が別の道を選びたいと思うなら、犯行予告とかばんばんしてみる、ありえないぐらいにばんばんしてみるというのも一つの手なのではないかと思ったりなんかしちゃったりして。あはは。危ない?

追記(08/03/09)

僕は抽象的な思考、仮定を下に帰結を導き、それに解釈を与える思考を利用しています。
つまり、このエントリにも多くの抽象化され単純化された、ややもすれば現実から乖離するような仮定がいくつか仕込まれています。

僕はその仮定を「使える」から使っているのであって、もしその仮定が「使えない」と考えるのであれば、もしくはあまりにも現実から乖離していると考えるのであれば十分反論の余地があると思います。

具体的には
このエントリにおける「犯行予告」とは、匿名の人間が匿名の対象に向けた「●●県の小学生を殺します」的な犯行予告であること。
これはこのエントリを書かせた現実の事件
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/06/news006.html
等がこのような犯行予告だったことから「妥当」な仮定だと考えています。

また、このエントリにおける「犯行予告が無意味である」とは、前提の部分に書いたように、犯行予告が、その予告する犯行が実際に行われるかどうかという予測に、役に立たないということです。
犯行予告が無くても犯行は起こるときもあれば起こらないときもある。
犯行予告があっても犯行は起こるときもあれば起こらないときもある。
犯行予告があったときに犯行は起こりやすくなるのか否か。
このエントリでは否だと仮定して議論を進めています。

MuichkineMuichkine 2008/03/05 11:59 >SuzuTamaki ネット  「匿名の無意味な情報」であるかどうかの判断が自明でないために結局責任を取らなくてはいけない。犯行の予告が正しいか悪かの問題は殺人が正しいか悪かと同じように難しいけれど警察の行動は適切だったと思います

id:SuzuTamakiのブクマコメントへの答え
確かにそこは実証に基づいてないからこの論のネックのように見えるけど、コメントの後半とはうまく接続してないね。
統治者は「匿名の無意味な情報」だと言って責任を回避することは可能なんだ。そう被統治者が予想するなら、やっぱり責任うんぬんにまつわる議論は成り立たない。
ただし、警察の行動は必要じゃないとは僕は書いてない。ただたんに見せしめとしてだけ必要だったと書いている。

警察の行動は、後から実際に犯行があったら大変だったから必要なことだったと思うのかい?
既に溢れてる多くの犯罪予告をさしおいて?

SuzuTamakiSuzuTamaki 2008/03/05 13:05 当のブクマコメントは既に消去してしまいました。申し訳ありません。
より詳しく書かれた同じ内容をトラックバック先に記しておきました。ご確認ください。

「後から実際に犯行があったら大変だ」から犯行予告の存在を警察は取り締まるべきだけれど「既に溢れてる多くの犯罪予告」をすべて取り締まるのは事実上不可能なので「見せしめ」を行う。
という構図ならどうでしょう。
「ただたんに見せしめとしてだけ必要」な状況というのは、犯行予告を取り締まるための合理的な理由はないけれどとりあえずいけないことだから見せしめとして取り締まります、というようにも読めてしまう。私はそれが見せしめなのか否かというところまで現時点で踏み込むつもりはありませんが(基本的に見せしめ説は大いに賛成です)それとは別に犯行予告を取り締まること自体が妥当なのかどうかという問題があってそれを妥当であると主張したのが当のブクマコメントでありトラバ先の記述であります。

ゲスト