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ブラウン管TV 不法投棄増加

薄型買って地デジ


回収場所に山積みされた不法投棄のテレビ(名古屋市熱田区で)=谷之口昭撮影

 テレビの地上アナログ放送が2011年7月に終了し、地上デジタル放送(地デジ)に完全移行するのに伴い、薄型テレビへの買い替えが進み、ブラウン管テレビの不法投棄が増えている。名古屋市内では、不法投棄のごみの量は減少しているが、ブラウン管テレビは昨年度、過去最も多い1173台に上った。市では、「この夏の北京五輪や地デジ化を控え、今後ますます不法投棄の増加が懸念される」と危機感を強めている。

“国策移行” 国の対応求める声

 名古屋市によると、06年度に不法投棄されたブラウン管テレビを処理するため、リサイクル料金257万円を支払った。今年度も1月までに既に815台の不法投棄が確認されている。

 市内16区の中で多いのは、守山区(117台)、南区(83台)、中区(80台)、港区(76台)など。「リサイクル料(約3000円)の支払いを嫌う人が、人目に付きにくい川沿いや港、工業地域などに放置している可能性が高い」(市道路管理課)という。

 01年の家電リサイクル法施行に伴い、市内で不法投棄されたごみの量は、01年度の450トンから06年度は58トンまで減少した。エアコンや冷蔵庫、洗濯機は減少しているが、テレビだけが01年度の569台から次第に増加しているのが実情だ。

 電機メーカーでつくる「電子情報技術産業協会」(東京都)の推計では、買い替えで廃棄されるブラウン管テレビは、07年から11年までの5年間で5000万台に達する見通し。

 市作業課では、夜間パトロールの強化や広報紙などを通して住民へのPRを行っているが、「北京五輪前のボーナス商戦や完全デジタル化などを考えると、不法投棄数がさらに増えることが懸念される。特効薬はなく、住民のモラルに期待するしかない」と話す。

 リサイクル問題に詳しい中部大学総合工学研究所の武田邦彦教授(資源材料工学)は、「地デジ化は国の施策で進めており、各自治体に問題の処理を任せるには限界がある。海外では日本のブラウン管テレビへの需要は依然大きい。国が回収して、廃棄物処理の技術を援助して輸出するなど、抜本的な解決策を考える時期に来ている」と指摘している。

 地上デジタル放送 情報をデジタル信号で送るため、高画質、高音質の映像が楽しめる。2011年7月に完全移行し、テレビ番組を見るためには地デジ対応テレビが必要になる。ブラウン管テレビでもチューナーを設置すれば受信可能だが、古いテレビには未対応のものも。


2008年3月9日  読売新聞)
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