産婦人科医療はめざましく進歩してきましたが、医療の現場にいると、女性を取り巻く社会的な風習や慣習はまだまだ根強く残っていると感じます。産婦人科の扱う性や生殖に関することは、女性自身が意識する以上に社会的な影響を強く受けているのです。
ドメスティックバイオレンス(DV)は大きな社会問題ですが、同時に産婦人科の問題でもあります。妊娠中にDVの頻度が増加すること、妊娠中の暴力は母体だけでなく胎児の健康にも影響する(低出生体重児や胎児死亡が増える)ことなどがその理由です。
女性が心身ともに健康で、自分らしく生きる権利を保障することが重要です。社会が女性の健康に関する情報の発信・啓発を行うと同時に、女性が自分のからだのことをきちんと知り、自分自身で決め、決めたことに責任を持つことも必要です。
産婦人科医は「一生の健康の担い手」であるとお話ししてきました。最終回にあたり、かかりつけの婦人科のホームドクターを持つことをお勧めします。身近でさまざまな相談ができ、診療を受けられるからです。1年間、「女性の健康50話」をお読みいただき、ありがとうございました。(大阪樟蔭女子大教授・三宅婦人科内科医院医師、甲村弘子)
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◇お知らせ
16日(日)は「目50話」第44話、23日(日)は同第49話を掲載。30日(日)から毎週日曜掲載「続・女性の健康50話」を始めます。
毎日新聞 2008年3月9日 大阪朝刊
3月9日 | 第50話 ホームドクター |
3月2日 | 第49話 性差を考えた医療 |
2月24日 | 第48話 治せる尿もれ |
2月17日 | 第47話 夫婦で向き合う |
2月10日 | 第46話 空の巣症候群 |