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スクランブル:医療・福祉現場を考える 増える患者らの暴力 /広島

 ◇深刻、急がれる対策 医療崩壊の拍車にも

 ◇看護師ら3割が身体的被害--協会調査

 安芸高田市で今年1月、通院していた総合病院の病院長に難癖を付けて脅し、医師を配置転換させたとして安芸高田市吉田町、農業、木原国明被告(58)が強要容疑などで県警に逮捕された。医療や福祉の現場で患者らからのセクハラや暴言などの暴力が増え、県看護協会の調査では会員の3割以上が身体的暴力の被害を経験している。医療崩壊に拍車をかけかねない問題だけに対策が急がれる。【矢追健介】

 ◆執拗な難癖

 安芸高田署などによると、木原被告は「注射の打ち方が気に入らない」「あのベッドがいい」「部屋が寒い」などと医師や職員に、少なくとも数年前から執拗(しつよう)に繰り返していた。

 昨年1月ごろからは物を投げつけるなどエスカレート。昨年7月には「若い衆らで、頭に木刀で刺さすぞ」などと自分の背後に暴力団がいるかのように脅し、臨床工学技士ら数人が精神的ショックから出勤できなくなったという。昨年8月には脅された院長が、透析センター科長の職を解くまでになった。

 報復を恐れた病院側は警察への被害届を出し渋り、事態は悪化していった。捜査した安芸高田署の幹部は「早く被害届を出してほしかったが……」と振り返る。

 ◆ささいなことが

 患者による「言葉の暴力」が、逮捕にまで至った例はまれだが、医療や福祉の現場では既に深刻な問題になっている。

 県看護協会が昨年、看護師ら864人を対象にした調査では、「身体的暴力を受けた」という回答が約30%、「言葉の暴力やセクハラなど精神的暴力を受けた」が約15%に上った。原因までは分析していないが、関係者は「『待ち時間が長い』など、ささいなことから暴力に発展する例が増えている」と指摘する。

 ある医療関係者は「疲れ切って『辞めたい、ノイローゼになる』と漏らす看護師も少なくない。表面化するのは氷山の一角だ」と話す。

 ◆毅然な態度を

 対処法はあるのか。調査では、暴力を受けた際、「上司への報告手続きがある」という回答は約40%で、半分以下しかなかった。

 手続きがない場合では、暴力を受けた経験がある人は約61%。手続きがある場合は約35%と少なくなっている。同協会の板谷美智子会長は「看護師らは暴力を受けても自分の責任と感じて、報告したがらない。しかし、報告手続きを定めたり、警備員を配置するなどして、病院側が一丸となって毅(き)然とした態度をとることが大切」と話している。

毎日新聞 2008年3月9日

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