ここから本文です。現在の位置は トップ > 地域ニュース > 青森 > 記事です。

青森

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

この人:県医師確保対策監・山中朋子さん /青森

 ◇地域医療、より身近に--山中朋子さん(53)

 医師の資格を持つ県職員である。人口10万人あたりの医師数が164人、全国ワースト4位(04年)という青森で、新たな医師確保と疲弊する県内医師の労働環境改善のため、医師の目線で施策作りにかかわる。「医師として働いてよかったと思えるような地域づくりをしたい」と話す。

 県内で臨床医師として働いた経験を持ち、医師が感じる精神的、肉体的負担を身をもって理解している。初めて患者の死に立ち会ったのは、医師免許を取って数カ月目。25歳だった。膵臓(すいぞう)がん末期の40代男性で、泣き叫ぶ妻と必死に父の足をさする2人の子どもに囲まれ、心臓マッサージを続けた。「どのくらいの間だったのかわからない。ものすごく長く感じた」。遅れて病室に到着した指導医が止めるよう指示した時は「救われた」と思ったという。

 長男の妊娠中にも、患者の容体が急変し、夜中に呼び出された。7カ月目のおなかを抱え、必死に心臓マッサージを施しながら「他人の命のために、この子の命が守れないんじゃないかと本気で思った」と振り返る。

 その過酷さを知った上で、「命にかかわる仕事はやりがいがある。金や労働環境の厳しさ以上に得るものがあるからこそ、医者は一生懸命に仕事を続けるのだと思う」と医療現場の魅力を語る。

 1988年、保健所に派遣されたことをきっかけに行政へ仕事の場を移した。03~04年は県健康福祉部長も務めた。「行政は縁の下の力持ち。地域の人が病気の予防に取り組んだり、切れ目のない医療を受けられるようなシステムを作るのが仕事だ」

 行政に携わったことで医療制度などの仕組みを覚え、多様な人脈が持つことができた。「臨床に戻った時に、これらはかなり強みになると思う。戻るかどうか今はわからないけど、まだまだ新しい自分にトライしたいという思いはある」と笑う。

 仕事をする上で大切なものは「(自分が)崩れるまで仕事に立ち向かうプライド」だと語る。「行政にいると壁にぶち当たることばかり。八方ふさがりということも、けっこうある。でも、どこかに可能性を見いだして突き進むという行政マンとしてのプライドを、最大限に持っていたい」【喜浦遊】

毎日新聞 2008年3月9日

青森 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報