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2008年3月9日

◎金沢の無電柱化 低コスト方式を定着させたい

 金沢市が新年度から検討する低コストの無電柱化事業を、道路の美観を広げ、城下町の 風情を引き立たせるために積極的に普及させたい。市は「道路標識特区」で案内標識の縮小化を進め、警戒標識の撤去なども検討しているが、沿道景観への効果は限定的で、求められるのはやはり無電柱化のスピードアップである。

 無電柱化が思うように進まない最大の理由は一メートル当たり八十万円から百万円も要 すると言われる多額の工事費であり、自治体の財政状況や電力会社などの経営環境を考えればコスト縮減は急務である。電柱撤去対策は「地中化」から「無電柱化」に変わり、軒下配線や裏配線など工法も多様化してきた。地域の特性に応じて最適の手法を探り、「金沢方式」を定着させてほしい。

 今年は金沢城跡が国史跡、主計町も国の重要伝統的建造物群保存地区の選定が見込まれ るなど、文化財としての町並みが面的に広がることになる。世界遺産暫定リスト入りや国土交通省が創設する歴史的環境形成総合支援事業の選定第一号を目指す金沢市にとっては、歴史的建造物群を取り巻く空間整備も極めて大事であり、周辺地域でクモの巣状に電線が張り巡らされていてはせっかくの財産も価値が半減しかねない。

 金沢市が設置する低コストの無電柱化検討会は、国、県、電力会社、通信会社も交えて 構成される。無電柱化はこれから幹線道路から細い道路へと比重が移るが、狭い道は歩道に変圧器を設置することが難しく、新たに用地を取得する必要も生じてくる。地中空間が狭ければ配線工事にも多額の費用を要する。

 近年は埋設物の縮小化や浅い層に埋める技術も開発され、他県では地中化にこだわらず 、家々の軒下に電線を通したり、表通りから見えなくする裏配線も採用されている。景観や防災、コストの観点からどの工法がふさわしいのか路線ごとにきめ細かく対応する必要があろう。

 無電柱化が進まないばかりに、そこに張られた広告物や標識類が無秩序に放置されたよ うな地域もある。低コスト手法は二〇〇九年度から五年間の次期無電柱化推進計画に反映されるが、新幹線開業へ向けた大事な期間であり、新たな工夫で無電柱化にスピード感を持たせてほしい。

◎アフリカPKO 資源外交の推進力にも

 政府は、アフリカのスーダン南部で展開されている国連平和維持活動(PKO)に自衛 隊を派遣する方向で調整を進めており、高村正彦外相が来日したスーダン政府高官にその旨を伝えた。日本の現在のPKOは「平和協力国家」と胸を張れるほどの内容を伴っていない。スーダンでのPKOが参加条件に合致するのであれば、積極的に取り組みたい。

 日本の対アフリカ支援は、国家主席を先頭に強力な資源外交を行う中国や、旧植民地時 代からの結びつきが強い欧米に比べて出遅れている。政府は昨年、南アフリカと希少金属の共同開発などで合意し、巻き返しの一歩を踏み出したところである。内戦で疲弊したスーダンの復興支援や対アフリカODA(政府開発援助)の拡充をテコに資源外交の遅れを挽回する戦略も考えたい。

 外務省によると、今年二月現在、世界十七カ所でPKOが展開され、各国の軍隊や警察 官など総勢約八万三千人が活動に従事しているという。日本も一九九二年にPKO協力法を制定し、カンボジアなどで実績を積んできたが、現在は中東・ゴラン高原でのPKOなどに約五十人を派遣するにとどまっている。

 アフリカでは、豊富な地下資源と潜在的な市場をめぐって国際競争が激化している。日 本は、五月に横浜で開催されるアフリカ開発会議を一九九三年から主導しており、国際的な対アフリカ支援をリードしてきた。しかし、経済援助額はさほど多くなく、近年は中国が開く「中国アフリカ協力フォーラム」にお株を奪われそうな印象もある。資源の獲得を目指す中国は、対外経済支援の四割以上をアフリカに注ぎ、アフリカでのPKOに千人以上を派遣しているといわれる。日本もその積極性は見習わなければなるまい。

 しかし、援助の仕方は中国を反面教師としてもらいたい。例えば、中国は石油利権のた めスーダン政府に武器を含む巨額援助を行い、ダルフール地方での住民虐殺に手を貸す形になっていると批判されている。日本は中国の対外援助の在り方について「透明性が欠如し、環境・社会への配慮を欠いている」などと批判してきた。そうした批判を自ら招かないようにする必要がある。


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