生活保護申請、法律家が後押し――受給手続き門前払いなど「泣き寝入りしないで」2008/03/09配信
生活保護の希望者に弁護士ら法律家が自治体の申請窓口まで同行して支援する動きが広がっている。財政悪化や不正請求の横行などで給付金の増加を懸念して申請に消極的な自治体が増え、中には受給できなかった高齢者が孤独死したケースなどがあったためだ。有志の弁護士らが各地で支援団体を結成、「本当に保護が必要な人が泣き寝入りせずにすむよう、法律家の支援を利用してほしい」と呼び掛けている。
昨年10月、がん治療のため働けず生活保護を申請するために大阪府内のある役所を訪ねた女性(50)は、ぼうぜんとした。「こんなに対応が違うとは」。10日前、1人で来た時は「家賃が基準を超えている」と申請書すらもらえず“門前払い”。弁護士が同行したこの日は一転、受給手続きが進んだからだ。 「基準内の家賃の住宅に引っ越せば生活保護を受けられる。転居費用の補助も出るはず」と指摘した弁護士に、担当職員は反論しなかった。女性は「制度をよく知らないと役所は冷たい。生活が行き詰まるところだった」と話す。 女性に付き添ったのは、弁護士や司法書士約150人でつくる「近畿生活保護支援法律家ネットワーク」のメンバー。昨年10月の設立から約4カ月半で315件の電話相談が寄せられた。3分の1は窓口対応への苦情。法律家が同行した結果、2月末までに32件受給が認められたという。 近畿ネットの小久保哲郎弁護士(大阪弁護士会)は「国が義務付けている収入調査すらしないなど不当な申請拒否が見られる。職員の知識不足から受理していない例もある」と指摘する。 支援の機運が高まったのは、2005年に北九州市で生活保護の申請を拒まれた高齢者の孤独死がきっかけ。同市では一昨年も生活保護を打ち切られた高齢者が餓死。各地の弁護士会に届く相談から、法的根拠なく申請を拒否しているケースがみられることも分かった。 昨年4月には東京や埼玉の弁護士らが全国に先駆け「首都圏生活保護支援法律家ネットワーク」を結成。同10月以降、近畿、東北、九州、静岡県でも同様の組織ができ、今年1月には愛知、岐阜、三重の3県で東海のネットを旗揚げした。 高知県でも2月、有志の弁護士らがネット設立を呼び掛け始めた。鎌田毅弁護士(高知弁護士会)は「声を上げられず苦しむ人の掘り起こしをしたい」と話している。
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