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地上げ:闇の構図/下 力の背景に山口組

 ◇上場企業と対等取引

 「都心部の難しい物件でも交渉期間を固く守って(立ち退き交渉を進めて)くれた」

 東証2部上場の不動産会社「スルガコーポレーション」の岩田一雄会長(社長を辞任)は4日の会見で、「光誉(こうよ)実業」社長、朝治(あさじ)博容疑者(59)=弁護士法違反(非弁護士活動)容疑で逮捕=の仕事ぶりを高く評価した。しかし、その交渉力のよりどころは、山口組宅見組幹部との深い交友だった。朝治容疑者は、幹部とゴルフなどを通じて親しくなり、「光誉の裏には宅見がいる」と言われた。

 山口組の東京進出が止まらない。

 JR池袋駅近くに、2次団体で最多の約7200人の組員を抱える山健組の下部団体が組事務所として使用しているビルがある。このビルはもともと、東京都千代田区の不動産会社が所有していた。しかし、山口組後藤組と交友がある男が役員の金融会社がこの不動産会社に融資し、競売を申し立てた。結局、03年落札したのは山健組系幹部が役員になっている貿易会社だった。

 構造的不況から脱出できない関西圏から東京に進出し、拠点を置く。警視庁が確認しているだけで、都内には約650社の暴力団関係企業がある。うち山口組系は約200社。10年前の2倍だ。

 流れを加速させたのが、05年9月、台東区に本部があった指定暴力団国粋会の傘下入りだ。国粋会は大きなシノギ(用心棒代)が見込める銀座や六本木にシマ(縄張り)を持っていたが、実態は、在京の有力な指定暴力団住吉会にシマを貸していた。

 捜査当局によると、山口組はシマの返還を求めたとされる。そして、昨年2月、住吉会系組幹部が何者かに射殺され、両組織の間で銃撃事件が続発した。抗争は5日間で収束し、現状は維持されたが、水面下では緊張状態が続いている。

 06年オープンした東京の新名所「表参道ヒルズ」(渋谷区神宮前4)。その5軒隣にスルガ社所有のテナントビルがある。朝治容疑者の親族が代表の会社が入居し、男たちが出入りを繰り返す。今回の摘発の舞台となった秀和紀尾井町TBRビル(千代田区)でも見られた光景だ。

 違うのは、スルガ社と売買を偽装し所有権があるように仮装したのではなく、実際に登記簿上の所有者として光誉が登場したことだ。昨年5月、ビルを購入した光誉はその日のうちにスルガ社に売却した。上場企業との対等な取引。「光誉の威力を利用してきた上場企業が、逆に食われ始めたのではないか」。捜査幹部にも、新たな闇の構図はまだ見えていない。

毎日新聞 2008年3月8日 東京朝刊

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