現状の折尾駅(JR九州)が不便なのは確かで、改修工事の必要性は理解できる。しかし、貴重な歴史的建造物である駅舎を取り壊してよいものだろうか。また、改修は都市再開発事業と一体になっている。昨年、生活保護打ち切りで餓死者まで出した財政難の、北九州市の財政負担も気になる。
折尾駅・本駅舎(東口)
先月末、デジカメ片手に
JR九州・折尾駅を訪ねた。もっとも、普段のぼくにとって、折尾駅は通過駅の一つに過ぎなかった
(関連記事)。今回の出来事があるまでは、対岸の……という感じだった。しかしながら、取材してみて改めて「もったい無い気がするが……」と思った。
折尾駅を取材したきっかけは、編集部から紹介された「転送歓迎」のメールだった。そのメールには、下記のような思いが述べられていた。
【折尾駅舎は、線路高架事業に伴なう折尾総合整備事業によって
このままでは、平成21年に取壊されます。
折尾駅舎は、大正5年建築の90年を越える木造総2階建の駅舎で、「日本初の立体交差・待合室の丸椅子・高架下の赤煉瓦のトンネルなどがあり、訪れるべき価値のある駅」の全国7位に選ばれました。(日経新聞)
折尾駅舎は、まちを愛する人にとっての誇りであり、シンボルです。
折尾らしさを残した駅にするため、新駅に隣接するなどして、
折尾駅舎を保存活用できないものかと思います。
折尾のまちは、駅を中心に交通・産業・文化の拠点として繁栄してきました。
その中でも『折尾駅』は、石炭輸送によって日本の近代化に大きく貢献した重要な歴史的遺産です。
折尾駅を取り壊すことは、北九州地域の「来し方」の証人を消し去ってしまうことになります。
※ 来し方:過ぎ去った時、やってきた方向・経路。
この再開発は、単に交通の流れや生活を便利にしていくだけのものではなく、日本の産業を支えた歴史を大切にし、それを活かしたまちづくりであって欲しいと願います。
JRで現存する木造総2階建の駅舎は、折尾駅・門司港駅・日光駅・原宿駅の4つだけだともいわれています。折尾地区だけでなく、日本中の方にも保存を呼びかけていただければと思います。
お手数をおかけ致しますが、どうか、よろしくお願い申し上げます】
若松方面から撮影(福北ゆたか線・1、2番線)
工事の理由は理解できる。この駅、乗換えが非常に不便なのだ。最も不便なのは、福北ゆたか線下り・7番線からの乗換えである。一度、鷹見口から駅を出なければならないのだ。それからレンガ通りを抜けて、東口に入りなおすのだ、その間、レンガ通りを出たら露天なので、雨の日は難儀だ。
また、折尾駅くらい、反対側(西口)がわかりにくい駅はないだろう。立体交差が災いしているのだ。慣れれば苦になることではないかもしれないが、そこにたどり着くには、階段のアップダウンを余儀なくされる。ついで申せば、景色が全く違うにも関わらず西口側と東口側とが通り抜けにくい。
取材に行った時、ホームの工事はすでに始まっていた。職員に聞いてみると、(鹿児島本線と福北ゆたか線の)「一本化のため止むを得ない、駅舎取り壊しも既定事実だ、といわんばかり。
ぼくは取材ついでに、折尾駅の近景を見て回った。こんなに不便な駅も珍しいだろう。しかし、だからといって、風情までなくすのは、いかがなものか。変な言い方だが、不便には不便にしかない風情があるのだ。それらは、写真でご判断いただきたい。
折尾駅舎。来年には取り壊されて、仮駅舎を使用するという。諸行無常なので、作り直すことを否定する気はないが、既存のものをいたずらに壊すのは、どうだろう……。
余計なお世話だが、北九州市は前市長の残したツケで1兆円もの借金がある。昨年、生活保護打ち切りで餓死する人さえいた市なのに、一方でこの工事にかかる費用は、総額350億円とか(JR、国、県、市、4者で負担)。鉄道の立体交差化と一体になった駅周辺の都市再開発には、さらに200億円の事業費が予定されている。
北九州市財政負担のしわ寄せは、きっと駅の中や周囲で生計を立てる人に及ぶことだろう。鹿児島線下りホームにあった、¥150のたこ焼きも、駅東口の食堂も、きっとなくなる。代わりにキヨスクかコンビニを入れるのだろうけど、それでいいものだろうか……。
西口
(以下の写真は、クリックすると大きくなります)
1・2番線(平面)と、3〜5番線(高架)
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周辺踏切の1つ
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6・7番線
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