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不便だが「もったいない」北九州市・JR折尾駅舎の取り壊し

村井正2008/03/07
現状の折尾駅(JR九州)が不便なのは確かで、改修工事の必要性は理解できる。しかし、貴重な歴史的建造物である駅舎を取り壊してよいものだろうか。また、改修は都市再開発事業と一体になっている。昨年、生活保護打ち切りで餓死者まで出した財政難の、北九州市の財政負担も気になる。
福岡 交通 防災・復興

不便だが「もったいない」北九州市・JR折尾駅舎の取り壊し | 折尾駅・本駅舎(東口)
折尾駅・本駅舎(東口)
 先月末、デジカメ片手にJR九州・折尾駅を訪ねた。もっとも、普段のぼくにとって、折尾駅は通過駅の一つに過ぎなかった(関連記事)。今回の出来事があるまでは、対岸の……という感じだった。しかしながら、取材してみて改めて「もったい無い気がするが……」と思った。

 折尾駅を取材したきっかけは、編集部から紹介された「転送歓迎」のメールだった。そのメールには、下記のような思いが述べられていた。

【折尾駅舎は、線路高架事業に伴なう折尾総合整備事業によって
 このままでは、平成21年に取壊されます。

 折尾駅舎は、大正5年建築の90年を越える木造総2階建の駅舎で、「日本初の立体交差・待合室の丸椅子・高架下の赤煉瓦のトンネルなどがあり、訪れるべき価値のある駅」の全国7位に選ばれました。(日経新聞)

 折尾駅舎は、まちを愛する人にとっての誇りであり、シンボルです。
 折尾らしさを残した駅にするため、新駅に隣接するなどして、
 折尾駅舎を保存活用できないものかと思います。

 折尾のまちは、駅を中心に交通・産業・文化の拠点として繁栄してきました。
 その中でも『折尾駅』は、石炭輸送によって日本の近代化に大きく貢献した重要な歴史的遺産です。

 折尾駅を取り壊すことは、北九州地域の「来し方」の証人を消し去ってしまうことになります。 
※ 来し方:過ぎ去った時、やってきた方向・経路。

 この再開発は、単に交通の流れや生活を便利にしていくだけのものではなく、日本の産業を支えた歴史を大切にし、それを活かしたまちづくりであって欲しいと願います。

 JRで現存する木造総2階建の駅舎は、折尾駅・門司港駅・日光駅・原宿駅の4つだけだともいわれています。折尾地区だけでなく、日本中の方にも保存を呼びかけていただければと思います。

 お手数をおかけ致しますが、どうか、よろしくお願い申し上げます】
(関連サイト:折尾駅舎・堀川運河を保存する会、署名活動のお願い

不便だが「もったいない」北九州市・JR折尾駅舎の取り壊し | 若松方面から撮影(福北ゆたか線・1、2番線)
若松方面から撮影(福北ゆたか線・1、2番線)
 工事の理由は理解できる。この駅、乗換えが非常に不便なのだ。最も不便なのは、福北ゆたか線下り・7番線からの乗換えである。一度、鷹見口から駅を出なければならないのだ。それからレンガ通りを抜けて、東口に入りなおすのだ、その間、レンガ通りを出たら露天なので、雨の日は難儀だ。

 また、折尾駅くらい、反対側(西口)がわかりにくい駅はないだろう。立体交差が災いしているのだ。慣れれば苦になることではないかもしれないが、そこにたどり着くには、階段のアップダウンを余儀なくされる。ついで申せば、景色が全く違うにも関わらず西口側と東口側とが通り抜けにくい。

 取材に行った時、ホームの工事はすでに始まっていた。職員に聞いてみると、(鹿児島本線と福北ゆたか線の)「一本化のため止むを得ない、駅舎取り壊しも既定事実だ、といわんばかり。

 ぼくは取材ついでに、折尾駅の近景を見て回った。こんなに不便な駅も珍しいだろう。しかし、だからといって、風情までなくすのは、いかがなものか。変な言い方だが、不便には不便にしかない風情があるのだ。それらは、写真でご判断いただきたい。

 折尾駅舎。来年には取り壊されて、仮駅舎を使用するという。諸行無常なので、作り直すことを否定する気はないが、既存のものをいたずらに壊すのは、どうだろう……。

 余計なお世話だが、北九州市は前市長の残したツケで1兆円もの借金がある。昨年、生活保護打ち切りで餓死する人さえいた市なのに、一方でこの工事にかかる費用は、総額350億円とか(JR、国、県、市、4者で負担)。鉄道の立体交差化と一体になった駅周辺の都市再開発には、さらに200億円の事業費が予定されている。

 北九州市財政負担のしわ寄せは、きっと駅の中や周囲で生計を立てる人に及ぶことだろう。鹿児島線下りホームにあった、¥150のたこ焼きも、駅東口の食堂も、きっとなくなる。代わりにキヨスクかコンビニを入れるのだろうけど、それでいいものだろうか……。

不便だが「もったいない」北九州市・JR折尾駅舎の取り壊し | 西口
西口

(以下の写真は、クリックすると大きくなります)
不便だが「もったいない」北九州市・JR折尾駅舎の取り壊し | 1・2番線(平面)と、3〜5番線(高架)
1・2番線(平面)と、3〜5番線(高架)
不便だが「もったいない」北九州市・JR折尾駅舎の取り壊し | 周辺踏切の1つ
周辺踏切の1つ
不便だが「もったいない」北九州市・JR折尾駅舎の取り壊し | 6・7番線
6・7番線
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[33090] だから言ってるでしょう
名前:村井正
日時:2008/03/08 22:40

ぼくは折尾が地元ではないと。
よく読んでくださいな。
なるほど、べんきょうになりました。
言うだけ無駄かもしれませんが、これは「よそ者」の視点です。
あなたの視点は視点で理解しますが。

「大きなコンビニ」ってどういう意味ですか<<お調べになったら?
こんなに知っておられるんでしょう?

新駅舎になったときにスペースがなくなるという可能性はありますが、それは別の問題といえます。<<どう別問題ですかね?雇用そして彼らの「生業」という本質は外していませんが。


北九州市が問題に絡むからといって、単純に批判するとは単なる公務員批判に過ぎないといえませんか?確かに生活保護の事件があったのは事実ですが、区画整理や駅保存とは別の次元ではないでしょうか。北九州だからというキーワードだけで非難しないでもらいたいものです<<拙稿のエッセンスがわかっていませんね。誰も駅をいじるな、なんて言ってませんよ。では、550億も、有体に考えればなぜ必要です?
それとも、あなたは、異を唱えるものは絶対的に許せない、狭隘なキャラクターなんですかね?でしたらどこぞの掲示板のほうがいいのでは?
余計なお世話ですかね?






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[33089] 折尾の事情をどの程度ご存知なんですか?
名前:福盛俊明
日時:2008/03/08 21:54

まずはじめに、am/pmは九州旅客鉄道の子会社の「JR九州リテール」という会社が経営していることをご存知でしょうか?ウィキペディアで調べればすぐわかることです。もちろん近畿日本鉄道の子会社も経営者であったため近鉄沿線にもあるし、東武の関連会社であったため東武沿線にもあります。キヨスクが関連企業ですが、九州のキヨスクもJR九州リテールの経営です。キヨスクをam/pmに統合した駅はあります(筑前新宮のように)。わざわざ自社系列のコンビニを棄てて他のコンビニを入れるでしょうか?そもそも「大きなコンビニ」ってどういう意味ですか?

駅弁の東筑軒ですが、本社は折尾駅西口のすぐ目の前にあります。その会社が黒崎、若松、直方、赤間などでも営業しています。また、駅弁売りの人も、特急列車への積み込みという業務もしています。

150円のたこ焼きも、毎日いるわけではありません。焼鳥等別の店があることもあります。他の駅も含めて交代しながらやっています。それが戸畑です。もちろん、新駅舎になったときにスペースがなくなるという可能性はありますが、それは別の問題といえます。

周囲の道路の渋滞や、離合できない狭い道路の問題など、折尾が抱える昔からの問題であり、きちんと処理できなかった事実はあります。昔は駅前広場が今よりもっと狭く、市バスも誘導員を使ってバックで駅横に入れていました。その市バスも、駅前からだとガードをくぐって左折すると筑豊本線の踏切、列車が来るときは渋滞です。そして右折。道路渋滞で問題であったことは解決していません。狭い路地も放置され、危険極まりない状況です。

先日、会議への招待のはがきが来ました。もちろん折尾が抱える問題も含めて地域として総合的な保存方法を模索している状態です。現在は建築でもバリアフリーや老朽化したときの安全性など議論が大きいものです。利用者の多い鉄道駅であること、構造が複雑で初心者が迷う駅であること、バリアフリーに対応しにくいこと、様々な問題を含めて議論しています。

それと、北九州市が問題に絡むからといって、単純に批判するとは単なる公務員批判に過ぎないといえませんか?確かに生活保護の事件があったのは事実ですが、区画整理や駅保存とは別の次元ではないでしょうか。北九州だからというキーワードだけで非難しないでもらいたいものです。

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[33086] 確かに不便でしたな
名前:田中秀郎
日時:2008/03/08 16:13

私は以前、出張で折尾の駅を利用しましたが、
不便な駅舎で覚えています(笑)
貴重な駅舎であろうと思いますが、不便なものに
固執するのは、公共交通である以上、利用者不在の
議論かも知れない気がします。
まず今の時代に合うように改装し、その上で
保存可能な部分を残すのはどうでしょうか。

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[33085] URLの記事は拝見しました
名前:村井正
日時:2008/03/08 15:34

いくつか補足しておきます。
出入り業者につきましては、「新駅舎」になった場合のことを申したつもりでした。
しかしながら、なぜ

「駅舎にはコンビニ(am/pm)もキヨスクもありますし、150円のたこ焼きが駅改造でなくなるとは思えません(戸畑駅にも同じ業者がいます)。駅弁の立ち売りもなくなることはないでしょう。」と言い切れるのですか?

確かに、現在もおおせのとおり、am/pmなど入っていますが、「新駅舎」でも、入れるとは限らないのでは?より大きなコンビニはありますよ。

何より、「建て替え」にかこつけた過度の工事はいかがなものか、と思います。
北九州の箱もの行政は、大半がそうなっていたはずです。
地元の方と思しいですが、その点で監視は必要では。

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[33082] 私も折尾駅の問題点に意見があります
名前:福盛俊明
日時:2008/03/08 13:24

私が書いた折尾駅保存への会議があったことの文章です。こちらもお読みください。
http://www.news.janjan.jp/area/0802/0801319896/1.php

折尾駅自体が利用者が増加していること、駅周辺が道路の未整備という問題があること、地形や線形の関係で無理がある構造であること、駅の古さが故のバリアフリーへの未対応など、別の問題もあります。

もちろん、文化財である門司港駅に匹敵するくらいの重要性ある駅舎ですし、何らかの保存を熱望すること自体は、私も同意見です。しかし、折尾駅が抱える問題点は大きいことがいえますし、それについては改善は必要です。

確かに折尾駅には情緒はありますし、地域住民の誇りです。しかし、「現状を見る」ことを忘れてはならないと思います。現在の駅では何が必要か・・・を無視してはならないでしょう。

この駅でも、駅舎にはコンビニ(am/pm)もキヨスクもありますし、150円のたこ焼きが駅改造でなくなるとは思えません(戸畑駅にも同じ業者がいます)。駅弁の立ち売りもなくなることはないでしょう。

保存すべきと思うことは同じですが、同時に現役の鉄道駅として利用者のことが見えなければならないと思います。

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