現在の折尾駅舎。残すべきか取り壊すべきか話し合われている。
市やJRは、筑豊本線と鹿児島本線との立体交差は効率が悪く、また周辺道路が狭いことによる交通の不便さを問題視している。折尾駅自体の鹿児島本線と筑豊本線の十字型交差を解消し、さらに狭い道路の改善策として区画整理を行う予定、という。
現在の折尾駅舎は門司港駅と同じく、大正時代からの駅舎を改造しながら使用している。しかし、バス停やタクシー乗り場が狭い上、違法駐停車も多く、バスの定時運行に影響が出ているといえる。また、折尾駅が現在の繁華街と逆を向いていることも影響していると思われる。しかし、折尾駅も西口設置(1988年)で多少は変わった。西口設置で九州共立大学などへの利便性も向上した。しかし西口も駅前広場がなく、違法駐車が多い。 また、周辺道路の整備がよくないため、折尾駅の北側にある踏み切りは常に渋滞している。
折尾駅は大正時代の建築物だが、ほぼ同時代の門司港駅舎(北九州市門司区)は文化財として保存されている。同じく北九州市の若松駅も大正時代の駅舎があったが、「地元に保存するかどうかなど相談もなく、気がついたら突然のとりこわしという感じだった」と若松の人は非難している。そのため、若松の人は、海岸にある古いビルの保存に熱心だという。
左:珍しい煉瓦積みの折尾駅の通路。右:激しい渋滞が生じる折尾駅北口の踏切。
折尾駅舎は、本来なら門司港駅と同じく、文化財に指定されてもおかしくない。窓口をカウンター式にしたり、自動改札機も設置され、旧荷物窓口の部分にコンビニの「am/pm」を設置するなど、かなりの改造は行われている。しかし、プラットホームにレールの廃材を用いる、通路に煉瓦積みの部分をいまだに残している、などの点が地域の文化遺産とされている。
1月19日のシンポジウムでは、「折尾駅の価値について考える」講義があった。このシンポジウムでは、折尾駅が複雑な構造であること、駅舎そのものも文化財的であることも話題になった。
しかし、鉄道側か市側かは原因不明だが、この駅には問題点も多い。例えば、身体障害者用トイレがない、エレベーターも駅舎と3番線を結ぶものしかない、などバリアフリーに問題のある駅である。JR九州管内で5指に入る乗降客の多さからすれば、きちんと考えなければならない問題である。
シンポジウムでは、若松駅についても意見が出た。若松駅には大きな駅舎があったが、どうするか地元に諮りもせずに取り壊した。俳優の天本英世(故人)も、新聞のコラムで現在のコンクリート駅舎を「公衆便所のよう」と酷評している。
門司港や若松は終端駅であるため、バリアフリーはそれほど問題ではないのかもしれないが、折尾駅は乗り換えのための利用者もいるのだから、現駅舎を残すとしても、バリアフリーについては何らかの対策が必要である。
しかし、地元でも折尾駅舎の存在が快く見られていたかは、疑問である。折尾駅舎を取り壊すべきだ、との意見が地元ミニコミ誌に出たことがある。
本来なら、1年後に取り壊し予定の駅舎をどうするか話し合っても「とき既に遅し」ではないのか。本来なら、門司港や若松と同時に議論があってしかるべきだったと私は考える。
文化財としての駅舎……。感情的に残すか壊すかではなく、駅舎の存在意義をきちんと見直すことも大事だ。それが、ほとんどどないのが日本であろう。
(福盛俊明)
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おもな関連サイト
・JR折尾駅(ウィキペディア)
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