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医師が危ない
第2部・過酷な現場
2008年03月05日付・夕刊

 (7)「サマワ」を実感

くも膜下出血を起こした動脈瘤(りゅう)の三次元脳血管撮影画像。放置しておくと動脈瘤が再破裂するため、血管内手術でコイル(プラチナ製の針金)を詰めてふさぐ(右側画像)=高知医療センター提供 「こりゃ、激しいなあ…」。交通事故でB病院から救急車で転送されてきた患者を見て、高知医療センター脳神経外科、溝渕雅之医師(48)は言葉を失った。

 取材五日目、土曜日の夕方だった。B病院は救急病院だが、この日は脳外科医が休み。当直医がCT撮影して重症と判断。転送してきたのだ。

 患者の胸が激しく上下し、うめいている。溝渕医師はB病院で撮ったCT画像を見ながら、「うちでもう一回撮ったのと比べて、出血が大きくなってたらオペやなあ」とCT室に向かった。

 朝の血管内手術(カテ)の患者から数えて四台目の救急車。すべて脳疾患系である。

 二人目は小さな脳出血だが、脳梗塞(こうそく)の繰り返しで血管がもろくなっており手術は困難。三人目はくも膜下出血。運ばれてきた時は心肺停止状態。人工呼吸器で一命を取り留めていた。

 その対応は休日の病棟当番だった脳外科の森本雅徳部長(56)が、福井・溝渕組のカテの最中に行い、患者は二人とも救急ICUに入っていた。

 CT室で新たな画像を見た溝渕医師は「すごい出血や。骨が折れて、小脳へ空気がいっぱい入っとるなあ」。血腫を抜きたいが、血が固まらないと新たな出血を招くため、ICUに移して様子を見ることにした。

 午後六時、患者の入院指示を出し終えた彼は、官舎に戻って食事を取ることにした。岡山から妻子が来ていたのだ。

 遅い“昼食”だが、「いつものことです。福井先生は一日に二度、カテがあって十三時間も食べられなかったこともあるから。延々一晩中やって、あの時は十日間で残業百時間やったから」。

 外はもう暗くなり始めていた。朝からずっと手術、診察、電子カルテ打ちの繰り返しで土曜日が過ぎていく。世の中の出来事も、天気すらも分からない。

 「だから言ったでしょ。イラクのサマワだって。やっと分かった?」。そう言うと二百メートル向こうの建物に帰っていった。

 だが、久々の家族の団らんは二時間も続かなかった。先ほどの患者の容体が悪化し、ICUから呼ばれたのだ。

 再度CTを撮ると、脳の腫れが増し、このままだと三時間ほどの命という。緊急オペで頭の骨を二カ所外し、血腫を取るしかない。

 家族に連絡して緊急手術の同意をもらうと、手術室と麻酔科の責任者に連絡。待機当番の招集を頼んだ。

 「脳挫傷で頭が全体にやられとるから、どうなるか。最低でも五時間はかかるなあ」と溝渕医師。

 パソコンで手術、麻酔、輸血、血液製剤の使用承諾書を次々と作成。駆け付けた家族にサインをもらうと即座に手術室へ。帰宅直前だった森本部長も呼ばれ、一緒に入った。

 昼間のカテと急患対応で皆、疲れ切っているし、この手術の見通しは厳しいらしい。一晩中付き合う麻酔科医や手術室の看護師も大変だ。こんな無理を続けていると、それこそ自分らの命が危うくなるのではないか。

 森本部長に疑問を投げ掛けると、穏やかな口調で迷いもなく言った。

 「百パーセント植物状態になるのならやりません。でも、一パーセントでも可能性があるなら、やらないと。実際、駄目だと思った人でも話せるようになったこともありますし」

 午後十一時、脳外科のこの日二度目の緊急手術が始まった。

 【写真】くも膜下出血を起こした動脈瘤(りゅう)の三次元脳血管撮影画像。放置しておくと動脈瘤が再破裂するため、血管内手術でコイル(プラチナ製の針金)を詰めてふさぐ(右側画像)=高知医療センター提供

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