Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2007/05/23 [Wed] 01:12:19 » E d i t
最近、読売新聞は「生命を問う」という表題で、医療技術が進歩したことに対して社会はどう向き合うべきか、を考えるための記事を連載しています(平成19年4月22日日曜日連載開始)。その連載記事のうち、代理出産に関する解説部分を紹介したいと思います。


1.読売新聞平成19年4月22日付23面「生命を問う 不妊治療(1)」

自然の摂理を超えるのはどこまで許されるか  生命と倫理 揺れる通念

 私たちの直面する生老病死が様変わりしつつある。医療技術が急速に進歩し、そのスピードに法律や制度が追いつかず、私たちが正しいと信じてきた社会通念までも揺さぶられる状況が生まれている。生命(いのち)と倫理のはざまで何が起き、社会はそれにどう向き合っていくべきなのか。その答えを探したい。まず不妊治療の現場から連載をスタートしよう。

 「子供が欲しくても産めない人に代わってお手伝いができれば」「自分が味わった子育ての楽しさを知ってもらうことに、少しでも協力したい」

 諏訪マタニティークリニック(長野県)の根津八紘院長が今月12日、代理母の公募を発表してから、同クリニックには、20歳代後半〜50歳代前半で出産経験のある女性約20人から、電話などで申し出があった。

 根津院長は「こんなにも応募があるなんてありがたい。応募者の家族が代理出産をサポートしてくれるかどうか調査した上で、代理母を決めたい」と話す。

 東京都内で実施した記者会見には、根津院長のほか、子宮のない女性2人、無精子症の男性とその配偶者も参加。いずれも、根津院長を中心に結成した患者団体「扶助生殖医療を推進する会」のメンバーだ。

 彼女たちは、養子を迎えない限り、代理出産や夫婦間以外の体外受精など日本産科婦人科学会が会告(指針)で禁じた方法でしか子供を得ることができない。

 推進する会は、ホームページで代理出産の賛否などを尋ねるアンケートを用意している。同会の幹部は「代理出産を試みた当事者も勇気を持って会見に出席してくれた。月に3、4通だったアンケートの回答が、会見後には1日4、5通に増え、社会の関心を高めることができた」と話す。

 根津院長はこれまで5例の代理出産を行ったと明らかにしているが、代理母を努めたのは、いずれも子宮のない女性の姉妹や母で、親族にとどめていた。今回の代理母の公募は、それを第三者にまで広げることになり、賛否は割れている。

 龍谷大法科大学院の金城清子教授(生命倫理)は、健康なドナー(臓器提供者)にメスを入れる生体肝移植が、我が国では医療としてある程度普及している例をあげ、「代理出産が、生体肝移植よりは危険とは考えられない」と指摘。その上で、「妊娠や出産のリスクを納得し、『困っている人を助けたい』と代理母になる人を止めることはできない。無償のボランティアなら認めてもいいのでは」と、個人の自己決定を尊重するよう求める。

 一方、根津院長が、公募する代理母を40〜50歳代と比較的年齢が高い女性で想定している点に産婦人科医は懸念を示す。北里大医学部の海野信也教授によれば、40歳以上の妊婦の死亡率は20歳代前半に比べ10倍以上高いという。「(代理出産に)不利とみられるデータまでも代理母に示してからこれまで実施してきたのか」と海野教授は言う。

 また、東京大医学部の児玉聡講師(医療倫理学)は「多くの人がより良いルール作りを模索している折に、議論ではなく、ルールに反する行為を公表することで、自分の意思を示すのは不誠実」と、根津院長の行動を批判する。

 根津院長は1998年、会告に違反して、夫婦以外の第三者から卵子の提供を受けて体外受精を実施したとして、同学会から除名処分を受けた。その後復帰したが、今回は、最も軽い厳重注意にとどまった。

 その理由について同学会倫理委員長(当時、現理事長)の吉村泰典慶応大教授は「代理母の公募は、会告違反が前提の行為で許せないが、(代理出産の是非について)日本学術会議が審議中で結論が出ていないため」と話している。

 簡単に答えを見いだせそうにはない。「自然の摂理を超えるのはどこまで許されるのか」。根津院長らが突き付けた課題は重い。

◆会告見直し急ぐ産婦人科学会

 生殖補助医療は、卵子の入った培養液に多数の精子を加えて受精させ、子宮に戻す体外受精の実用化を機に急速に発展した。1個の精子を卵子に直接注入する顕微授精や代理出産といった技術・手法が洗練され、精子の足りない男性や子宮のない女性でも子供を得ることが可能になった。

 国内では東北大が1983年に、初の体外受精児を誕生させた。2004年に体外受精を行った患者は約7万8000人にのぼり、一般的な不妊治療として定着している。

 「初の体外受精児が誕生した時、これを医療として日本で実施して良いのか悪いのか議論が盛んに起きた。でも、今やそんなことを言う人は誰もいない」

 今月18日に日本産科婦人科学会の倫理委員長に就任した星合昊(ひろし)・近畿大教授は、東北大講師として初の体外受精児の誕生に携わった経験から、時代とともに、生殖補助医療に対する社会通念が変化していくことを実感している。

 日本には生殖補助医療を規制する法律はない。厚生労働省は03年、罰則付きで法律により代理出産を禁止すべきとの報告書をまとめた。同学会も03年、禁止の会告(指針)を定めたものの内規に過ぎず強制力はない。このため医療現場では、患者が望み、その技術を持った医師が応じれば、誰もそれを止められない。

 ただ、どんな医療技術であれ「好き勝手に使っていい」というのは暴論で、変わりゆく社会通念との折り合いは求められる。

 代理出産に関する社会通念はどうなのだろう。

 厚労省は、社会情勢の変化を踏まえ、代理出産などの関する国民の意識調査を現在進めている。

 柳沢厚労相は、今月13日の閣議後会見で、「細い道かもしれないけれども、(日本学術会議には代理出産を認める道は)ないかということを議論いただいている」と話している。

 学術会議は来年早々にも、代理出産の是非などについて結論を出す。星合教授は「技術の進歩もあり、会告を見直す間隔を短くしていく必要がある。学術会議の検討結果がまとまれば、ただちに代理出産に関する会告の見直しに着手したい」と話している。」(*記事中には、「代理出産をめぐる主な動き」とする年表が出ているがここでは省略)



(1) この記事から気になった点を3点挙げておきます。
まず1点。不妊治療の限界について、生命倫理の問題でもあると指摘した点は良いとしても、生命倫理学による判断基準について言及していないのです。

結局は、「自然の摂理」とか「社会通念」で限界付けるのだと言いたいようですが、「私たちが正しいと信じてきた社会通念までも揺さぶられる状況が生まれている」として、社会通念で判断できないと言っておきながら、「社会通念」で限界付けるのは論理矛盾であると思います。

読売新聞では触れていませんが、生命倫理学による判断基準は次のようなものです。

 「生命倫理学では、自己決定が基調になるべきだと考えられており、(a)自律尊重原理、(b)無危害原理、(c)仁恵原理、(d)正義原理、という相対的に独立したこの4つの原理を基礎として考えるということで一致している(今井道夫・札幌医科大学医学部教授著「生命倫理学入門〔第2版〕(2005年、産業図書)3・11頁〜)。」(「代理出産の是非を判断するに当たって必要とされる基礎知識〜厚労省、「代理出産」で意識調査実施へ(日経新聞平成19年1月15日付)」

要するに、自己決定が基本となるとしています。自己決定重視は、代理出産賛成派の根拠ですから、邪推すれば、生命倫理学上の議論を持ち出すと、代理出産否定を否定する議論をしづらくなるからわざと書かなかったといえそうです。


(2) 2点目代理出産否定者による批判が的外れであるという点です。

 「根津院長が、公募する代理母を40〜50歳代と比較的年齢が高い女性で想定している点に産婦人科医は懸念を示す。北里大医学部の海野信也教授によれば、40歳以上の妊婦の死亡率は20歳代前半に比べ10倍以上高いという。「(代理出産に)不利とみられるデータまでも代理母に示してからこれまで実施してきたのか」と海野教授は言う。

 また、東京大医学部の児玉聡講師(医療倫理学)は「多くの人がより良いルール作りを模索している折に、議論ではなく、ルールに反する行為を公表することで、自分の意思を示すのは不誠実」と、根津院長の行動を批判する。」


厚労省の統計によると、出生率のピークは、昭和39年当時では20歳代半ば、昭和59年は30歳代近く、平成16年には30歳前後にシフトしてきています。そうすると、今では「20歳代前半」出産は少なくなったのですから、「20歳代前半」と「40歳以上」の妊婦を比較すること自体、ナンセンスであるように思います。北里大医学部の海野信也教授の批判は妥当ではないと考えます。

厚生労働省は03年、代理出産などに関する報告書をまとめましたが、法案が成立しないまま放置状態でした。しかし、向井・高田夫妻が代理出産に挑むことを公言し最高裁判例まで争ったことでやっと、再び議論が再開されたのです。結局は、事実が先行しなければ議論も始まらないのです。
このように代理出産の事実が先行しないと動かないという客観的事実があるならば、客観的事実が「ルール」より先にあるのが当然ということになります。そうなると、児玉聡講師のように、「多くの人がより良いルール作りを模索している折」だから「ルールに反する行為を公表することで、自分の意思を示すのは不誠実」だと言うこと自体がおかしいのです。

また、今まで散々放置しておいて更に日本学術会議の結論が出るのは来年1月ですから、長期間待たせ過ぎているのではないか、と思うのが一般人の感覚のはずですが、児玉聡講師はそんな一般人の感覚は持ち合わせていないようです。
だいたい、「多くの人」とは日本学術会議のことでしょうが、日本学術会議は白紙の状態から議論することになっているのですから(当然、会告は問題とならない)、今は「ルール」自体がないに等しいのです。児玉聡講師による批判もまた的外れであって妥当でないと考えます。


(3) もっとも重要なのは3点目です。政府は日本学術会議に対して代理出産を認める結論を要求しており、日本産科婦人科学会も直ちに認める会告に変更する予定であるという点です。

 「柳沢厚労相は、今月13日の閣議後会見で、「細い道かもしれないけれども、(日本学術会議には代理出産を認める道は)ないかということを議論いただいている」と話している。

 学術会議は来年早々にも、代理出産の是非などについて結論を出す。星合教授は「技術の進歩もあり、会告を見直す間隔を短くしていく必要がある。学術会議の検討結果がまとまれば、ただちに代理出産に関する会告の見直しに着手したい」と話している。」


記事中に出ている柳沢厚労相の閣議後会見の中から、代理出産に言及した部分を引用しておきます。

 「大臣等記者会見 閣議後記者会見概要
(H19.04.13(金)08:50〜09:00 参議院議員食堂)

(記者)
 あともう一点、代理出産についてですが長野県のクリニックでですね、代理出産を引き受ける女性を公募するということがありましたけれども、これは議論が続いているところかと思いますが、現段階として厚生労働省としてこの公募に対して何か行動をとるご予定はございますでしょうか。

(大臣)
 これは一般的には、学会の否定的な考え方というのが今あるという事態ですね。それに対して、世論の動向というか、そういうものの変遷もあるであろうからということで、現在、学術会議の方にご検討をお願いしているという段階です。これも、どういう場合にそういったことが是認されるべきかということについて、たぶん非常に狭い道を想定して、その道だったらみんな国民の納得が得られるのではないかというふうなラインで、そういうことで探っているということでして、公募というようなことについては、ちょっとまだ思い至っていないというところではないかと思います。

(記者)
 学術会議が検討している段階で、こういう公募という動きが出てくることに対しては、どういうふうに見てますでしょうか。

(大臣)
 そういう学会の意見が出て、かつ、我々も最近の世論の動向からいって、これに対して、さらに多角的な、お医者さんだけの立場ではなくて、倫理の立場とか、そういうようなものも含めて、ご議論をしていただいているという経緯もご存知だろうと思うんですね。そういう経緯をやはり尊重していただきたいという気持ちはあります。

(記者)
 改めてこの問題に関して、法整備の必要性の是非についてお話しいただけますか。

(大臣)
 ですから、そういうことを含めて、今、学術会議の方に、先生方の専門的な検討をお願いしていると、こういうことです。

(記者)
 その当の医師の方は、国が制度を作るのを待っていられないというようなことを会見で言っているんですが、そのスピード的なことから言いますとどうですか。

(大臣)
 これは、そう右から左に結論が出るという程度の問題ではないのではないかと思いますね。もちろん、無用な時間をかけるということは、その問題に直面している具体的なご夫婦からすると、望ましくないことはわかりきっていますから、それはそれで、できるだけ審議を促進していただきたいとは思いますけれども、右から左に結論が出るというような問題ではない。特に、一度否定の意見が出ているわけですから、これをこういう中で、なんか細い道かもしれないけれども、ないかということをご議論いただいているわけですね。」(厚生労働省:平成19年4月13日付閣議後記者会見概要


すでに代理出産を認める結論は決定事項のようです。そうなると、日本学術会議は、代理出産を肯定する論理の提示と実施要綱を決定することが役割となるのでしょう。本来は、白紙の状態で議論してもらうはずだったのですが、政府によって結論が決められているのですから、学者の存在意義とはなんだろうかと空しい感じにもさせられます。

このような政府の意向は、代理出産否定派の方にとっては残念でしょう(苦笑)が、代理出産賛成の立場としては、実施条件にもよりますが少しは安心できるものといえそうです。




2.読売新聞平成19年4月29日付(日曜)15面「生命を問う 不妊治療(2)」

 「代理出産の子「国内百数十人」

 「がっかりしたし、怒りも覚えた。子宮の働きを持たない女性を救う道はないのかと思った」。11日に東京都内のホテルで記者会見したタレントの向井亜紀さん夫妻。代理出産でもうけた双子の男児との母子関係を認めなかった最高裁の決定について語った。

 がんで子宮を摘出した向井さんは、米国人女性に代理出産を依頼して双子が誕生。だが最高裁は先月、「産んだ女性が母親」との判例を踏襲した。双子は夫妻の遺伝情報を受け継いでおり、遺伝的なつながりを考慮しない決定には違和感を覚えた人もいるだろう。

 しかし、東北大の水野紀子教授(民法)は「勘違いしている人が多いが、民法は法律上の親子関係を血縁だけで決定しているのではない。最高裁の決定は妥当だ。産んだ女性を母とするのが極めて自然で、代理出産で生まれた子は養子縁組をして、実子同様に育てればいいのではないか」と話す。

 向井さん夫妻は代理出産を公言してきたため、出生届が受理されなかった。向井夫妻の代理出産を仲介した卵子提供・代理母出産情報センター(東京)の鷲見侑紀代表は「国内には既に代理出産で生まれた子供が百数十人いる。ほとんどは『渡航中に産んだ実子』として帰国後に出生届を提出している」と推測する。

◆仲介依頼 後絶たず

 鷲見さんは18年前から、代理出産を仲介するビジネスを手がけ、53組の夫婦が74人の子をもうけた。

 ただ、鷲見さんは現在、代理出産を積極的には薦めていない。「母子とも無事な保証はなく、費用も正確に見積もれないなど、想定外の事態があるため」という。妊娠の可能性を高めようと、以前は、複数の受精卵を代理母に移植することが多く、多胎妊娠で生まれた未熟児のケアに高額の費用がかかったこともあった。

 こうしたトラブルの処理に追われて、一時は仲介を中断したこともあったが、鷲見さんは「不妊夫婦に『代理出産だけが頼り』と泣かれ、やむを得ずドアを狭く開けて仲介を続けているのが現状」と話す。

 海外事情に詳しい東北大の辻村みよ子教授(憲法)によると、代理出産の商業的なあっせんを罰則付きで禁じているフランスでさえ、年間200〜400組のカップルが、240〜320万円で代理出産を依頼、水面下で行っているという。国内の代理出産が法律で禁止されても、できる国に渡航して試みる夫婦が後を絶たないと予想される。

 日本生殖医学会の石原理・倫理委員長(埼玉医大教授)は「代理出産で生まれたことが明らかな子供たちがいる。最優先に議論が必要なのは、この子供たちを法で実子と認めるかどうかだ。代理出産が日本で許されるかどうかは、その後の話だ」と強調している。」



(1) 気になる点は2点です。まず1点水野紀子教授(民法)は、向井高田夫妻の事案について多くの市民が最高裁決定に批判的だった意識が全く分かっておらず、国際養子縁組の理解に欠けている点です。

「双子は夫妻の遺伝情報を受け継いでおり、遺伝的なつながりを考慮しない決定には違和感を覚えた人もいるだろう。

 しかし、東北大の水野紀子教授(民法)は「勘違いしている人が多いが、民法は法律上の親子関係を血縁だけで決定しているのではない。最高裁の決定は妥当だ。産んだ女性を母とするのが極めて自然で、代理出産で生まれた子は養子縁組をして、実子同様に育てればいいのではないか」と話す。」


水野教授は、元々、フランス民法を極端に重視し、親子鑑定についてDNA鑑定を使うことに反対し、DNA鑑定で親子関係ありとされても親子関係を否定してよいというかなり異端なスタンスなのです。その異端なスタンスと、代理出産禁止というフランス法を日本法でも取り込むという背景があって、「民法は法律上の親子関係を血縁だけで決定しているのではない」という主張になるのです。水野教授の立場からすれば、「勘違いしている人が多い」というのも分かります。

しかし、多くの市民が最高裁決定に批判的だったのは、親子鑑定はDNAを重視しているはずなのに、なぜ母子関係では遺伝的なつながりがあっても否定されるのか訳が分からないという不公平感と、実際に親として育てているのは向井高田夫妻であって他にいないのに、なぜ親子になれないのかという素朴な感覚からです。水野教授は、「不公平感」と「素朴な感覚」が少しも気づかず、分かった気になって批判しているのですから、的外れな批判になっているのです。

しかも、呆れるのが向井・高田夫妻が養子縁組ができると軽信している点です。外国国籍の子供(双子)を養子にする場合は、国際(特別)養子縁組になるため、代理母を母親とすると要件充足が困難ですし、また、代理出産契約上、戸籍の母欄に代理母の名前を記載することができないのですから、普通養子縁組・特別養子縁組とわず認めることは極めて困難であることが少しも分かっていないのです(「向井高田夫妻、最高裁決定を受けて記者会見(4月11日)」)。

水野教授の批判が的外れであるというスタンスの記事として、八重山毎日新聞のコラム「不連続線」 (2007-05-13 12:08:26)を一部引用しておきます。

 「子を産まないことには、母親になれないのか…

 子を産まないことには、母親になれないのか。そんなことはないだろう。産まなくても育てれば立派な母親になれるし、一緒に成長してこそ母親を名乗る資格があると思う▼ゆえに代理出産であれ、もらい子であれ大事に養育する人が本当の母親で、向井さんの判例も、本人が産んだ産まなかったとの観点で子どもの国籍を認めないのは、裁判所が母親のなんたるかを良く理解していないからではないか(以下、略)」



(2) 2点目代理出産を罰則で禁止しているフランスも、実際上は代理出産を実施しており、誰も処罰することなく、黙認しているという点です。

「海外事情に詳しい東北大の辻村みよ子教授(憲法)によると、代理出産の商業的なあっせんを罰則付きで禁じているフランスでさえ、年間200〜400組のカップルが、240〜320万円で代理出産を依頼、水面下で行っているという。国内の代理出産が法律で禁止されても、できる国に渡航して試みる夫婦が後を絶たないと予想される。」

「水面下で行っている」ということはフランス国内で実施しているということだと思います。フランス人が米国に行って代理出産を実施していることはよく知られた事実ですから、「水面下」とは国内でのことだと思えるからです。
しかも、日本では今までで「代理出産で生まれた子供が百数十人」程度ですから、年間200〜400組ものカップルが代理出産を実施しているのですから大規模に実施しており、黙認にとどまらないという評価も可能です。また、代理出産を禁止しているドイツでも、ドイツ人は容認しているベルギーや米国へ行って実施しているのです。
このような状況からすると、実際上は、世界中で代理出産は認められてしまっているといえるのです。




3.読売新聞平成19年5月6日付(日曜)11面「生命を問う 不妊治療(3)」

代理出産 欠かせぬ体制整備

 「赤ちゃんを依頼主に渡す瞬間、あなたはどう思うかしら。愛情を抱きすぎてしまう可能性がある?」。米ロサンゼルス郊外の精神分析医マリリン・ショア博士が、代理母の適性検査を行う際、最も重視する質問だ。さらに「依頼主や子供と連絡を取り続けたい?」といった問いが続く。

 「もし『子供と定期的に会いたい』と答えたら、要注意と、ショア博士。この6年半で500人以上を検査し、数人を「不適」と判断したという。

 米国ではかつて、代理母が依頼主との間で子供の親権を争う事件が相次いだ。一部の州が代理出産を規制する一方、容認する州では不幸な事態を避けるため、体制整備が進んだ。法令や判例の確立はもちろん、代理母を仲介する業者、精神分析医、弁護士などの連携も、重要な役割を果たす。

 精神分析医は、家族の理解、ストレス解消の仕方、子供の数など、様々な角度から適性を調べる。「子供がいないとダメ。大体は2〜3人いて『これ以上は要らない』と思っている。私の会った代理母が訴訟を起こしたことはない」と、ショア博士は自信を見せる。

 一方、代理母と依頼主との間で交わす契約書には、あらゆる事態の想定が盛り込まれる。臨月で脳死になった妊婦の延命、依頼主夫婦が急死した場合の後見人、障害が見つかった胎児の中絶の可否――。ローリ・メイヤー弁護士は「双方がじっくり読んで理解し、細部まで共通認識を持って進む」と語る。

 メイヤー氏は、年間100〜150件の契約を手がける代理出産専門の弁護士。カリフォルニア州には、こうした弁護士が約30人いる。代理出産を支える体制が成熟した同州には、代理母を2度、3度と経験する「リピーター」が多い。

 数年前に日本人夫婦の子供を産んだAさんも「もう一度やろうかな」と、意欲を見せる。「『赤ちゃんと別れる時に落ち込むかも』という心配は少しあった。でも、出産の時、立ち会った依頼主の女性との間にきずなを感じ、すんなり『彼女のために産んであげた』と思えた」と振り返る。

 Aさんが代理出産を始めたのは、友人が心臓病で出産できなくなり、「助けたい」と考えたのが契機だった。報酬については「(受精卵の移植前後に)何週間も受ける注射は痛いし、夫には性生活も我慢してもらう。様々な不都合に対する埋め合わせがもらえるのは、良いことだ」と語る。

 長男を代理出産でもうけた日本人女性のK・ブラウンさんは今、ロス近郊で仲介業「KBプラニング」を営む。「自分と同じように不妊で悩み、苦しみ、つらい思いを重ねた人たちの力になりたい」と語り、日本で代理出産への理解が深まるよう期待している。」



この記事は、代理出産実施のための条件は何かについてのものです。代理母の適性検査が重要であることと、色々な場合を想定した代理出産契約を締結することが必要であることを指摘しています。そして、代理出産を支える体制が成熟すれば、代理母を2度、3度と経験する「リピーター」が多くなるほど、訴訟もなく安定した代理出産運営が可能になるというわけです。

要するに、代理出産については、デメリットを含めて、代理母依頼者・代理母候補者ともに十分に理解する必要があり、十分な理解を保障するためには体制整備があるとよいということです。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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