「セカンドライフ」撤退企業続出

 インターネットでショッピングやコミュニケーションを行う仮想空間「セカンドライフ」(リンデン・ラボ社=本社米国)が昨年話題になった。盛んに宣伝され、多くの企業が乗りだすのと対照的に、インターネットユーザーの多くは冷静な見方が目立った。あの盛り上がりは何だったのか? 事情に詳しい関係者の話などから実像を追った―。(広)

■賭博・アダルト禁止…ネット社会に厳しい現実
 「セカンドライフ」はネット上の仮想空間に利用者が「アバター」と呼ばれるキャラクターを通して3D仮想現実に入り込み、ショッピングを行うなどで広がっていくサービス。商業スペースには著名な企業が名を連ね、米国では「セカンドライフ長者」なる人物も出たという。国内でも2007年前後に大手企業の進出が各メディアで報じられた。
 一方でセカンドライフの問題点は早くから指摘されていた。コンテンツを本格的に楽しむには有料で複雑な手順の登録が必要。苦労して登録してもCG(コンピューターグラフィックス)の処理は利用者のパソコンの性能に左右され、アバターの操作性も低い。さらに一つのコンテンツが同時に閲覧できるのは数十人だけの小規模。ネット上ではグラフィックの稚拙さや有料コンテンツの内容に国内版の運営当初から否定的な意見が占めていた。
 金銭トラブルも起こっている。07年8月にセカンドライフ内の仮想通貨を高い利率で集めていたATM(現金自動預払機)運営会社が取り付け騒ぎを起こした。リンデン・ラボ社の公式ブログによると1月8日にセカンドライフ内の銀行業務が事実上、全面中止。ギャンブルやアダルトのコンテンツも相次いで禁止されてユーザー離れが加速、空間内は閑散の一途をたどっている。
 みずほコーポレート銀行(東京都)が1月末に発表したリポートでも課題が挙げられている。継続的利用者が約2%しかおらず、仮想通貨の不透明さや安心・安全の不十分さを指摘。仮想現実単独での活用は一定の限界があると結論付けた。
 一時期の盛り上がりについて事情に詳しい広告業界関係者は「企画書の見栄えが良く、ウェブやブログの流行に後追いの形となった広告業界が、面目躍如として飛び付きやすい絶好の的だった」と分析。現在は多くの企業が撤退か放置している状態という。「商業スペースはほとんどが仲介業者からレンタルで借りている。何もしなくてもお金が掛かるので多くの企業は近いうちに撤退していくだろう」
 関係者は「企業側の投資規模は小さく『ネットで何かしなければ』と考えた末の実験や商品PRとの抱き合わせ的な進出が目立っただけ、今後は険しい」と続ける。先のリポートでも広告効果の減退や企業の撤退を推測し「仮想世界の本質を見極めていく時期になった」と示されている。
 21世紀が始まったと同時にライフスタイルの中心に名乗りを挙げたパソコンとインターネット空間。その先ぽうと思われた3D仮想現実サービスを待っていたのは厳しい「現実」だったようだ。


(2008年3月04日更新)


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