「なぜ？　運動会シーズン、秋から春へ」の記事詳細：イザ！

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　■週５日制導入で行事分散化

　秋になって運動会の季節を迎えたと思いがちだが、実は春に開催する小中学校が増えている。種目内容にも変化が生じ、定番の集団演技や応援合戦を取りやめる学校もみられる。様変わりする運動会の現状を探った。（運動部　神田さやか）

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　東京２３区の教育委員会に電話調査を実施したところ、今年度、春（５、６月）に運動会を開催した中学校は、９割を超えた。小学校でも半数以上が春開催だった。運動会はもはや“秋の風物詩”ではなくなったようだ。
　春開催が増えた理由のひとつは、行事の分散化。秋はほかにも文化祭、合唱コンクールなど学校行事が多いが、週５日制の導入で授業時間が減り、行事の指導に充てる時間の確保が難しくなった。
　そこで、文化祭などよりも短期間で準備できる運動会を春へ移行する学校が増えた。また、２学期制の学校は、開催時期が学期末と重なるため、秋を避ける傾向がみられた。中学校では「受験」も要因だった。ただ「春はクラス替えをしたばかり。本来はクラスがまとまる秋開催の方がよい」（都内の区教育委員会）との声もある。

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　これまで秋開催が「定番」だったことについて、文部科学省は「特に指示はしていない。秋は気候が温暖でスポーツがしやすい時期のためではないか」と指摘する。また、中京大学の木村吉次名誉教授（スポーツ史）は「運動会は明治時代、家族が参観する村祭り的な行事となり、明治天皇の誕生日の１１月３日に集中する傾向があった。農村地域では収穫後の秋が開催しやすかったのでは」と話す。
　時代の社会情勢を反映してきた運動会。木村名誉教授によると、日本初の学校での運動会は明治７年、東京・築地の海軍兵学寮で行われた「競闘遊戯」。徒競走や豚追い競争などを実施した。全国の学校に広まったのは、明治３３年の小学校令改正に伴い、各校に運動場が設置されて以降。大正時代は騎馬戦、リレー競走が花形種目となり、昭和時代はレコードの普及で集団体操が増えた。

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　最近、とくに中学校の運動会では準備のかかる種目が敬遠されがちのようだ。練習時間を確保しづらいためで、これも時代の流れといえる。町田市教育センターが昨年度、市内の公立小中学校６０校を対象に実施した調査でもその傾向が表れ、運動会で定番の創作ダンス、組体操などの集団演技を実施していない中学校は２０校中１５校に上った。集団演技を行っていないという同市内のある中学校は「以前は応援合戦も力を入れたが、練習時間の確保が難しく今はやっていない。入場行進の練習も大幅に削った」と明かす。
　ただ、小学校はほとんどが集団演技を実施。同センターに寄せられた学校側の意見には「授業数確保のため、練習時間を減らす方向で（種目が）集団演技から地域交流的なゲームなどへ変わるのが良いと思うが、保護者の集団演技への期待が大きい」などとやめられない事情を訴える声もあった。
　さまざまな事情で揺れる運動会。プロ教師の会主宰で日本教育大学院大学の河上亮一教授は「運動会はクラスの中で自分がどんな役割を果たすのかなど人間関係を学び、生活力をつける実体験の場」とその意義を訴える。運動会の軽視は、学校が担ってきた生活教育の機会が減少する危険もはらんでいる。

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