グローバル投資のポイント

2008/03/07(金)18:54

東証の意気込みを示す海外ETF上場の有無

3月7日、東京証券取引所(東証)は、上場規則を改正し、金や原油など商品価格に連動する上場投資信託(ETF)、いわゆる商品ETFの上場を可能にしました。今回の規則改正は、昨年末に金融庁が公表した「金融・資本市場競争力強化プラン」での「ETFの多様化」という提言に則ったものです。報道によれば、今回の規則改正に伴い、米ステート・ストリート投信投資顧問が、ニューヨーク上場の金ETFの重複上場を東証に申請する見通しで、今後も東証にはいくつかの商品ETFが上場する見込みです。

商品価格は、株価や債券価格との連動性が少ないことで知られています。このため、株式や債券だけでなく商品にも投資資金を振り分ければ、いわゆる分散効果が発揮され、投資全体で見た場合、安定的なリターンが得られることが期待できます。数多くの商品ETFが東証に上場されれば、投資家は、株式だけでなく商品にも同じ市場(東証)を通じて投資できるため、より手軽に分散効果を得ることが可能になります。

商品だけでなく国内ETFの品揃えも増える見込みです。野村アセットマネジメントは、業種別の株価指数に連動するETF17本を3月21日に設定し、同25日に東京証券取引所に上場すると発表しています。また日興アセットマネジメントは、規模別のTOPIX指数に連動するETF3本を3月21日に設定し、同24日に東証に上場することを発表しています。欧米の証券取引所と比べると、東証に上場しているETFの数は、まだまだ限定的といえるので、今後も新しいETFが上場され、投資家の選択肢が増えることを期待したいものです。

個人的に気になるのが、商品ETFや国内ETFの上場が拡大しているのに、海外株を対象としたETF(海外ETF)が、新たに上場するという話が聞こえてこないことです。さきほど述べたように、欧米の証券取引所では、数多くのETFが上場しています。たとえば、米国では、S&P500という米国株式指数に連動したETF(SPDR)の純資産総額が666億ドル(約6.8兆円)もの規模を誇っています。これだけ大きなETFならば、東証と重複上場しても不思議ではない気がします。

投資の分散効果は、投資対象を分散させるだけでなく、投資対象の地域を分散させることでも得られます。たとえば、日本の投資家が、日本株だけに投資をするよりも、米国株や欧州株に投資をすれば、仮に日本の景気後退で日本株が下落しても、米国株や欧州株は、日本株のように下落せず、投資全体のリターンは安定化することが期待できます。

東証に上場する新しいETFが、商品ETFや国内ETFだけで終わるのか、それとも海外ETFにまで品揃えが広がるのかを眺めることで、我々は東証の意気込みを図り知ることができるような気がします。

村田雅志(むらた・まさし)

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商品ETFとは何?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

金や原油など商品価格に連動する上場投資信託


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村田雅志(むらた・まさし)

GCIキャピタル・チーフエコノミスト
三和総合研究所、三和銀行にて産業機械アナリスト、UFJ総合研究所にてエコノミストとして活動後、
2004年にGCIアセットマネジメント入社。05年9月より現職。
著書として「景気予測から始める株式投資入門」、「絶対リターンを目指すオルタナティブ投資」、
一冊まるごと投資商品超入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」など

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