糖尿病悪化の仕組み解明 細胞守るタンパク質に着目東北大大学院医学系研究科の石原寿光講師(代謝学)と岡芳知教授(同)らの研究グループは、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のベータ細胞がオーバーワーク状態になると、働きを抑制するタンパク質がベータ細胞内に作られ、細胞を保護する仕組みを突き止めた。生活習慣病として増え続ける糖尿病の治療薬開発につながると期待される。糖尿病患者の大半を占め、血糖値を調節するインスリンの作用不全が要因とされる2型糖尿病の発症や悪化を抑えるメカニズムを確認したのは初めてという。 グループは糖尿病マウスのベータ細胞に、インスリン分泌にかかわるタンパク質の合成を抑制するタンパク質「4E―BP1」が増えていることに着目。4E―BP1を欠損させたマウスと通常のマウスを高脂肪食で24週間飼育し、血糖値や膵臓のインスリン量を比較した。 欠損マウスは食後の血糖値が下がりにくく、1時間半後には通常のマウスと2倍の開きが出た。インスリン量は約20%少なかった。 石原講師は「4E―BP1が無いマウスは、過剰な負担がかかったベータ細胞が死滅し、糖尿病が重症化した」と説明。インスリンの分泌が盛んになると、ベータ細胞では4E―BP1が作られ、細胞の負担を軽減していることが分かった。 わが国では食習慣の欧米化が進み、生活習慣病として糖尿病患者の増加が問題になっている。日本人は元来、ベータ細胞が疲弊しやすく、糖尿病を発症しやすいという。 石原講師は「4E―BP1を増やす薬剤が開発されれば、糖尿病の悪化を防ぐことも可能になる。日本人により有効な薬剤になるだろう」と話している。 研究成果は4日付の米科学誌セル・メタボリズムに発表した。
2008年03月04日火曜日
|