『築地魚河岸三代目』製作発表記者会見
シリーズ化へ手応えあり!! 築地市場・史上発!潮の香りと鮮魚の匂いの記者会見
日時:2007年12月12日(水)
場所:築地市場内・茶屋
出席者:大沢たかお、田中麗奈、森口瑤子、伊東四朗、松原信吾(監督)、松本輝起(松竹・取締役編成局長)
市場内を縦横無尽に駆け巡る小さな三輪トラック「ターレ」のパレードで開始となった『築地魚河岸三代目』の製作発表記者会見。小学館「ビッグコミック」連載中の同名ロングセラーコミックが原作とあって、そのメインの舞台となる築地市場の全面協力を得ての撮影に次いで、築地市場まさに史上初の会見が実現した。荷捌所・通称「茶屋」に儲けられた特設会場に、ゴム長に前掛け姿の主演の大沢たかお、共演の田中麗奈、森口瑤子、伊東四朗らが顔を揃え、終始笑いの絶えない和やかな一時となった。また、フォトセッションでは粋でいなせな魚河岸職人20人と出世魚「ブリ」も交え賑やかにお開きとなった。
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まずは松竹取締役編成局長・松本輝起氏よりご挨拶
■松本:「『築地魚河岸三代目』は、本年9月9日にクランクインいたしまして、この築地の全面協力で順調に撮影が進み、10月31日にクランクアップいたしました。来年の1月10日には初号完成の予定です。笑いあり、涙あり、それぞれの優しさがあり、それでいてハラハラドキドキさせる下町の人情劇になっています。期待していただいて充分な仕上がりになったと自負しております。公開は来年6月上旬、丸の内プラゼールほか全国公開となります。また、小学館「ビッグコミック」も創刊40周年となり、私たちはこの映画を大切に育てて行きたい。できればシリーズ化にもって行きたいと考えています」
主人公・赤木旬太郎を演じるのは大沢たかおさんです
■大沢:「色んなところでちょこちょこ話してはいるんですけど、うちの亡くなったおじいちゃん、おばあちゃんがずっと魚河岸に勤めてまして、親戚もみんなその辺に住んで、やっちゃ場(注:青物市場のこと)とか色んなところで働いていたんですけど、まさにこの記者会見させていただいている場所は茶屋ってところで、うちの亡くなったじいちゃん、ばあちゃんが70歳まで働いていた場所です。そんな場所で、こんなにたくさんの皆さんにお越しいただいて、しかも『築地魚河岸三代目』という作品を発表できるということは嬉しいことですし、参加させていただいて感謝しています」
続いて、旬太郎の恋人で、仲卸の名店「魚辰」の娘・鏑木明日香役の田中麗奈さん
■田中:「今回、築地で育った娘でありながら大沢さん演じる赤木旬太郎の恋人役ということで、一人の人物なんですが、色んな面を体験できました。人は一人じゃ生きて行けない、色んな人に生かされて生きているんだというのが脚本に書かれているんですが、そのセリフと重ねて、色んな方々とお芝居で絡めたなと思うので、それもすごく嬉しかったです。ほんとうに温かいお話なので、ぜひ色んな方に、そういう昔からある懐かしさや温かさや人情が伝わったらいいなと思います」
次に小料理屋の女将・千秋役の森口瑤子さん
■森口:「千秋という女性は、明るくて優しくて思いやりもあって、ほんとうに女性から見ても理想の女性で、お話をいただいたときはプレッシャーもあったんですが、この活気のある築地の中で、図々しいですけど、ちょっとだけ癒しの存在になれたらいいなと思っています。この映画を観て、皆さんが築地をもっともっと身近に感じてくださることが私の願いです」
伊東四朗さんが「魚辰」の二代目で明日香の父・鏑木徳三郎を演じます
■伊東:「徳三郎という二代目の役で、いかにも築地らしい名前だなと気に入っています。そして田中さんの父親です。見た目はおじいちゃんでしょうけど、父親です。共演者の皆さんにも監督にもちゃんと納得してもらってやりましたので、あとは皆さんが納得してくれれば問題ないです(笑)。感想としては、あたしはここは室内かと思って来ましたら、吹きさらしでした。この下ランニングなんで、さぶいなというのは第一印象です」
そして、松原信吾監督は
■松原:「この話を立ち上げてシナリオをつくり始めた段階では、青春映画にしたいなと思っておりました。赤木旬太郎は30代半ばなので青春映画としては少し薹が立っていますが、遅れてきた青春映画でいいなと思っていました。節目に当たって、もう一回選択を迫られるというか、やり直すというか、そういう話ができればいいなと思っていました。それで、こちらにロケハンで来て、築地の皆さんに接して色んなことを教えていただいて、オーバーではなくて、江戸っ子の粋といなせと男気が残っている素敵な場所だなとしみじみ思いまして、主人公がここに足を踏み入れて、そのまま引き寄せられて、ここにいたいと思うに至るそんなドラマが元になっているんですが、ほんとうにオーバーでなくそういう感じがして、今、どっかでやっておりますが、CG使って昭和30年代を再現なんかしなくたって、ちゃんとすぐ傍にあるじゃないか、こういう世界が。という思いがすごくしてきまして、段々に映画の中身が、失われたものへの郷愁というか、あるいは麗奈さんが仰っていた〈生かされている〉というニュアンスが色濃くなってきて、自分の中で、ああそうか、こういう風にもって行くのかというのが撮りながらわかった感じでした。そういう意味で、昔ながらの素敵な人間関係の話と非常にうまいこと融合できたなと自負しております」
ここで、本日の会見を都合により欠席となった伊原剛さんからのメッセージを紹介します。伊原さんは「魚辰」の従業員・英二を演じています。
■伊原:「築地を舞台にしたドラマで、日本人が持っている温かい気持ちや人情が描かれた作品で、幅広い人たちが支持してくれると思います」
撮影に臨まれたときの意気込みと、撮影中の面白いエピソードがあれば聞かせてください
■大沢:「今回この築地市場に協力いただいて、朝方皆さんがお仕事している場所でご迷惑をかけながら、ほんとうによくしてもらって撮影できたことが、自分としてはすごくいい時間でした。声をかけてもらったり、時には〈どけ!〉とか怒鳴られたり。
赤木旬太郎という人間になって行く様がリアルにできたのがすごくよかったと思います。それと、撮影の魚はよく模型を使ったりするんですが、今回は全部、市場の皆さんに協力いただいて、セットでも本物の魚を使いまして、コンクリートの地面なんかも完全に再現してやっています。
スタッフや他のキャストの皆さんの意気込みを毎日感じながらやってこれた、自分の中ではすごく珍しい作品で、公開が楽しみです。それと、僕は若い子向けの作品が多く、うちの母親に、あんたの作品はわかんないって言われるんですが(笑)、そういう意味では、若い子だけじゃなくて、自分の世代も親の世代にもゆっくり楽しんでもらえる作品になるんじゃないかと期待しています」
■田中:「セット撮影で、実際に築地から持ってきたお魚を使っているので、終わった後に持って帰れるんですね。それがほんっとに嬉しくて、ウフフフ。たとえば、新鮮なシャケだったり、ハマグリ、エビ、サザエも。たんまりいただいちゃって、新鮮なまま。それをおうちに持って帰って、ちょうど九州から父が来ていたので、父と友だちも呼んで、塩ゆでしただけで食べたんですけど、ものすごく美味しくて。もう感動してしまいました。親孝行もできましたし、ハハハ。みんなで美味しいものを食べてすごく幸せでした。こんな思い出で申し訳ないんですけど。でも、こうやって、美味しいものでみんなで繋がれたりとか、温かい気持ちになったり、ホッとしたりするんだなと、これが今回の映画のよさだな、全てだなと思いました」
■森口:「いいですねぇ。私は残念ながら、築地のシーンというのがなかったので、美味しいお魚は食べられなかったんですが、セットがほんとうに素晴らしくて、それは築地の中だけではなく、私がやらせていただいた店の中も、リアルに出来上がっていまして、役作りというよりは、そのセットに入ったら何の気負いもなく千秋になれたなぁというくらい素晴らしいセットでした。私は料理をつくる振りをしているだけで、食べることが出来ず残念だったので、もしパート2なんてことがあったら、ぜひ築地に遊びに来たいと思います」
■伊東:「また魚の話に戻って申し訳ないですけども、ここにある魚は持って帰っていいんだよということで、皆さんは撮影中からアワビだのタラだのマグロだのヒラメだの目をつけて持ち帰ったそうですが、あたしはその日撮影がなかったんです。次の日に行ったら、見事に何もなくて、どういうことですかって聞いたら、休みの日の設定ですということで。ですから、何もないところで撮影して、とても悔しい思いをいたしました。それだけです(笑)」
新鮮な魚を食べるシーンは?
■伊東:「ないです!」
よかったことというのは?
■伊東:「あまりありませんね(笑)。プールの中でひどい立ち回りをさせていただいたり。台本ですと、柄本明と2人で最後に罵り合って終わりというですが、監督が突然、2人で大喧嘩をしてくださいと言って。その部分がアフレコになりまして、先日、見たんですね、自分を。見事に水中で脚が垂直になってまして、70歳のやることじゃないなと思いました(笑)」
この場所は吹きさらしですが、寒くないですか?
■伊東:「早く終わるといいなと思っています(笑)」
■松原:「伊東さんには水中プロレスまでやっていただきまして、大変申し訳ないことをしたと思っています(笑)。やっていて一番計算違いだったのは、たとえば朝行ってゲリラ的に撮影をしているんですが、場内ではターレという車が走り回っていて、この中で見ると非常に速く見えるんですね、で、台本をつくっているときから、ターレ・アクションをやりたいと思っていたんです。最後の方で伊原さんと森口さんのシーンで、ターレで駆けつけるシーンがあるんです。大沢くんが先に運転していて、途中で伊原さんに代わるんですが、これがですね、一般の公道を走ると全然速くないんです。車にびゅんびゅん追い抜かれてしまって(笑)。実際に走った方が速いんですよね。しょうがないので走ることに変えたんですが、こういう計算違いが随所にあってですね、魚河岸のことをあまり知らずにやっていたものだから面食らうことが多かったです。それから、映画のことを差し置いてなんですが、やはり日本人は魚だなとしみじみしましたね。魚は美味しいですね、何を喰っても。肉じゃないですね。魚河岸はいいところだなと、それが一番の感想ですね」
大沢さんは美味しい思いはされたんですか?
■大沢:「しましたよ。伊東さんの横で申し訳ないですけど(笑)、今日は持って帰っていいと言われた瞬間から撮影しながら品定めをしていて、サザエとかも持って帰りました。今回、おろす練習もしたんで、もちろん酷いもんなんですけども。実際、魚を焼いたこともなかったんで、網を買ってきて家で焼いたんですが、あんなに煙が出るものとは。部屋中真っ白になりながら食べましたが、すごい美味しかったです」
今まで料理の経験は?
■大沢:「ほとんどないですね。網もなかったくらいだし。いつ焼けたのかもわかんなくて。サザエもね、いつ焼けるのか。母親に電話しがならやりました」
魚をおろす練習もされたそうですが、今回の役を演じるに当たって大変だったことは?
■大沢:「今回はサラリーマンが転職して入ってくるという話だったので、魚のプロでもないし、実際、どうやって芝居するのかなと思っていたんですが、混乱したり、ターレに轢かれそうになったりしながらというのがリアルに出てました。大変かなと思っていたんですが、自分としては逆にすごく楽しむことができたかなと思います」
魚の目利きには自信ありですか?
■大沢:「これは難しいんですよ。映画の中に目利きをするシーンがあるんですけど、最初に言われるんですよね、プロの方に。どれだと思いますって。でも、ほぼ違いますね。その差っていうのは、長年培ったものなんだなっていうのにやりながら気づいて。でも、それがすごく面白くて。この作品、もしかして、次があるのかわからないんですけど、もしあったらもっと勉強して、赤木旬太郎が魚河岸の人間になってゆくのをリアルに見せられたら嬉しいなと思います」
大沢さんに伺います。この映画は今の日本人にどの点がアピールすると思いますか? また、築地の移転問題が取り沙汰されていますが、それについてはどう思われますか?
■大沢:「今、通り過ぎてしまったり、忘れかけてしまったものってたくさんあると思うんです。家族のことや、正直に生きるとか、自分の気持ちをぶつけるとか。この作品では喧嘩したり、ぶつかりあったりがすごく多いんです。今は、揉めたり喧嘩したりを避けていて、人付き合いに距離があるのがいいみたいになっているんだけど、この映画の中のように掴み合ったりするのを見ると、ほんとうはそういうぶつかり合いから人間関係って生まれてくるんじゃないのかなと思うので、そこを観る人には持って帰ってほしいし、さっき田中さんも言ってたけど、食べることで繋がることってすごくあるなと、家族の団欒でもいいしね。僕なんて一人で食べたり、なんか買ってきてすますっていうのが多いけど、やっぱり、誰かと食べるのが美味しかったり、これ美味しいねって話すのが楽しかったりするってのも、忘れかけていることなのかな。それが昔を回顧するのではなくて、この映画を通して自然に届けられたらうれしいなと思います。築地の移転問題に関しては、タイトルが『築地魚河岸三代目』ということなんで、移転した場合どうなっちゃうのかなって(笑)。でも、あまり深刻に考えないようにしています」
大沢さんと松原監督に伺います。シリーズ化への手応えは感じてらっしゃいますか?
■大沢:「僕は正直、一つ一つだと思っていて、今回の作品が皆さんに受け入れられてはじめて次のステージなのかなと思っています。とにかくみんなの心に残る作品にすることが第一だと思っています」
■松原:「手応えは十二分にありますが、あそこにいらっしゃる重役がなんとおっしゃるか次第だと思います。皆様が色々書いてくださって、なんとか当たってくれればいいなと願っております」
すみません、早く帰りたいと仰っていた伊東さんに伺います。娘役の田中さん、娘婿になる大沢さんとの共演で、面白いエピソードはありますか?
■伊東:「えっ、あたし? 面白いエピソードはなかったですね。撮影の合間に田中さんとバスの中で家族問題なんかをちょっとお話ししたことが印象に残ってますけど。親孝行なんて話をしたような気がしますけど、(田中さんに)覚えてませんか?」
■田中:「覚えてます。母が還暦を迎えたんですけど、何を贈ったら喜ぶのかなとか、還暦ってどういうことなんですかとか」
■伊東:「完全に爺様になってます」
何を贈るのがいいとアドバイスされたんですか?
■伊東:「あたしはすぐ忘れる人なんです。何か言ってました?」
■田中:「お聞きしたんですけど、でも、あげたいものはもう決まっていたので、どう思いますかみたいな(笑)」
■伊東:「無駄な会話だったんですね(笑)」
大沢さん、伊東さんの父親役はどうでしたか?
■大沢:「ずっとこの仕事をやっていて、一度もご一緒することがなかったんで、すごい楽しかったし、ドキドキしたし。えっ、怖い? 全然怖くないです。すごく面白くて勉強になったし、俳優として最高の瞬間でした」
では最後に、松原監督から一言お願いします。
■松原:「会見の最後に監督が締めるととても白けるんですね。で、違ったことをしようと思い、伊東さんに無理な注文をお願いして、先程ご了承いただきました。この映画は、赤木旬太郎を鏑木徳三郎が娘の婿として、同時に「魚辰」の三代目として認めるというお披露目シーンで終わるんです。ここでそのシーンをほんの一部、再現していただきたいと思います。そのお披露目が『築地魚河岸三代目』を皆さんにお披露目させていただくことになりそうなので、その口上をもって代えさせていただきます」
■伊東:「だいたい1ヶ月も前に喋ったことは忘れちゃうんです(笑)。また、忘れないと次の仕事のセリフが入ってきませんので、正確にはまったく覚えていないんですが、目の前にブリが置いてありまして、そこでこんなことを言いました。
皆さん、本日はありがとうございます。ご存知のように、ブリってやつは、ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリへと成長する出世魚です。ここにいる旬太郎は、まだそれ以前の藻じゃこです。このまんまここで働いていたら、ひょっとしたら築地の海でくたばっちまうかもしれません。が、もしも、この大バカ野郎がブリに大化けするようなことがあったらば、あたしはその時にはこいつを魚辰の三代目としてあらためて皆さんにご称揚させていただきたい。そう思っております。それまでどうかこの旬太郎を厳しく育ててやってください。どうぞよろしくお願いいたします! ってなセリフでした」
伊東四朗さんが「さぶい」と仰っていたとおり、吹きさらしの「茶屋」でしたが、温かい牡蠣汁が取材陣に振る舞われ、心から温まることができました!
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『築地魚河岸三代目』
配給:松竹
公開日:2008年6月
劇場情報:丸の内プラゼールほか全国にて
公式HP:http://www.uogashi3.jp/
あらすじ
商社に勤めるエリート・サラリーマンの赤木旬太郎は、リストラの陣頭指揮を任され思い悩む。その頃、恋人の明日香も父親の入院で実家である築地市場の仲卸「魚辰」と装飾デザイナーの仕事を掛け持ちする日々を送っていた。旬太郎は半ば強引に「魚辰」を手伝い始めるが、ど素人の身で役立つことはほとんどなかった。しかし、厳しくも温かい魚河岸に心惹かれるようになった旬太郎は、今までの生き方を大きく変える決断をする。
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プロフィール
大沢たかお
1968年東京都生まれ。94年にTVドラマ「君といた夏」で俳優デビューし、映画にも進出し精力的に活動する。主な出演作に『解夏』『世界の中心で、愛をさけぶ』『子ぎつねヘレン』『地下鉄に乗って』『眉山』『Life 天国で君に逢えたら』『ミッドナイトイーグル』など話題作・ヒット作多数。
取材・文:齊田安起子
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