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【特報 追う】ポリ容器どこから?なぜ?
この冬、日本海沿岸を中心に大量のポリ容器が漂着している。2月、秋田や山形など東北地方でも流れ着いているのが見つかった。環境省のまとめではその数、14府県で約2万3000個(22日現在)。中には強酸性の液体など劇物が残されている容器もあり、皮膚や衣服に付くとやけどなどするおそれがあるという。「これだけ大量の漂着物は記憶にない」と秋田県の関係者。このポリ容器。どこから、なぜ流れ着いているのか。(宮原啓彰)
これまでに東北沿岸で見つかったポリ容器は、秋田の3816個(25日現在)を始め、青森 472個(22日現在)▽山形1515個(同)。秋田ではpH 2.2の強酸性の液体など劇物入り容器が7個確認され、山形でも濃塩酸入りの容器1個が見つかった。「濃度などから工業薬品の可能性が高い」(秋田県環境整備課)という。
また「過酸化水素」と表記してある容器から塩酸が見つかったケースもあり、安易に触れないよう注意を呼びかけている。
環境省によると、確認されているだけで容器の4分の1近くにあたる約5500個にハングルの表記があった。
「日本海は海流が複雑で(どこから流れているか)一概に言えない」と気象庁は慎重に言葉を選ぶ。だが、「韓国と対馬の間を流れる対馬海流の影響で、日本海には西から東への大きな流れがある」という。
また、ポリ容器の大量漂着は過去にもあったがその季節はいずれも冬。同庁は「冬は日本海側から沿岸に向けて、北西の季節風が吹くため海上の漂流物が着岸しやすい」とする一方、「それだけで説明できるかといえば…」と言葉を濁した。
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一方の環境省では「これだけの大量の漂着物が、短期間に流れ着くのは不自然。人為的な要因によるものと考えざるを得ない」。
そこでクローズアップされたのがノリの養殖だ。同省の調べでは、ポリ容器の大量漂着は平成11年ごろから始まった。海苔(のり)産業情報センター(福岡県)によると、韓国産ノリの欧米への輸出はここ10数年で急速に拡大、それに伴い漁場も広がったという。「韓国の正確な生産力は資料が存在せず分からないが、現在は年100億枚程度の生産が可能ではないかと思う」と同センター。
韓国でもノリの収穫期は主に11〜3月の冬季が中心。そして、同国のノリ養殖業者たちは、収穫時期に合わせノリの「あかぐされ病」の殺菌のため本来禁止されているはずの硫酸や塩酸を使用しているというのだ。「安価な上、よく効くと多用しているらしい」と話す関係者もいる。
海上保安庁の要請で、韓国側が平成15年に行った調査では、韓国の海岸に養殖業者が保管してしていたポリ容器が高波にさらわれ、流出したケースが報告されているという。
だが、「(高波など)偶発的な事故だけで数万もの容器が流れるとは考えにくい」(環境省)のも事実だ。日本のノリ産業の関係者は「(韓国の養殖業者は)使ったポリ容器をそのまま海へ投棄しているようだ。韓国では日本のように自治体の規制も十分でなく、野放しに近いと聞く」とも話している。
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昨夏、秋田県の海水浴場に同じくハングルが記載された薬瓶や注射針など医療廃棄物が大量に流れ着いた。海水浴シーズンを目の前に、関係者は降ってわいた越境汚染に頭を抱えた。
今月23、24日の日本海は大しけ。「さらに大量のポリ容器が流れ着く可能性もある」と秋田県の担当者。「これだけの量だと職員だけで回収は不可能だ。業者に委託せざるを得ないが、少ない予算の中でやり繰りするしかない」。
環境省は原因究明に向け、韓国を始めとする周辺各国に調査を要請したが、解決への見通しは立っていない。
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【用語解説】廃ポリタンク漂着問題
1月15日、長崎県平戸市の海岸に約 700個のポリ容器が漂着しているのが確認されたことを皮切りに、九州と日本海沿岸地域を中心に14府県で計2万3000個が見つかった(22日現在、環境省まとめ)。その多くにハングルが表記されていたほか、中国語など外国語の表記も見られた。
ポリ容器の大量漂着は平成11年ごろから冬場を中心に始まった。全国の漂着数は海上保安庁のまとめによると、11年度、3万8000個▽12年度、1万1000個▽13年度、1万3000個▽14年度、2万9000個▽15年度、1万2000個、16年度、1万4000個▽17年度、9300個、18年度、なし−となっている。