芸能

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

歌舞伎:三月大歌舞伎(歌舞伎座) かわいらしく若々しい藤十郎の娘

 昼の最初が春らしい踊り3題の「春の寿」。「三番叟(さんばそう)」は我当、歌昇、翫雀(かんじゃく)、進之介。「萬歳(まんざい)」は梅玉。「屋敷娘」は扇雀、孝太郎。

 次が「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)、陣門・組打」。敦盛(実は子の小次郎)を打つくだりで、熊谷の團十郎(だんじゅうろう)は剛直さの中に子供への思いをにじませる。坂田藤十郎の敦盛は華やぎの中に強さがある。魁春(かいしゅん)が、武者の手にかかって死ぬ玉織姫の無念さを出し、市蔵の平山が的確だ。

 続いての菊五郎の「女伊達」は、菊五郎劇団らしい統制の取れた立ち回りが見もの。最後が「吉田屋」。仁左衛門が伊左衛門の色気と子供のような無邪気さの両面を見せた。福助の夕霧にあでやかさとはかなさがあり、秀太郎のおきさがしっとりとした風情を出す。左団次の喜左衛門。

 夜の最初は「鈴ケ森」。芝翫(しかん)の権八がいかにも若衆らしい様式美の中にところどころ見せる写実性がおもしろく、流れに程よい変化を与えている。富十郎の長兵衛がきっぱりとしている。

 続いて「京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)」。坂田藤十郎の花子が「喜寿」という副題が信じられないほど、かわいらしく若々しい。まさに「娘」の諸相を見せ、鹿子の衣装での道行が珍しい。團十郎の押し戻しが古風で立派だ。

 最後が「お祭佐七」。鳶(とび)の佐七(菊五郎)が、恋人の芸者、小糸(時蔵)の誠を疑って殺(あや)める。言ってしまえばそれだけの話だが、菊五郎の佐七が明るくさっぱりとし、時蔵との取り合わせもいい。団蔵の敵役ぶりがはまる。26日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2008年3月6日 東京夕刊

芸能 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報