2008年03月07日 週刊ダイヤモンド編集部
基礎年金「全額税方式」案に潜む問題点
駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授に聞く(前編)
●編集部注
注1)
日本の公的年金制度は、2階建てで構成されている。その1階部分が基礎年金(国民年金)だ。自営業者(第1号被保険者)、民間サラリーマン(第2号被保険者)、サラリーマンの配偶者(第3号被保険者)に共通する年金で、平均年金月額は5万8000円(満額支給の場合は6万6000円、2006年度末)である。2階部分は厚生年金や公務員の共済年金。現役時代の報酬によって受取額が変わる報酬比例年金で、平均年金月額は16万9000円である。
注2)
日本経済新聞社の年金制度改革研究会は1月、年金制度改革に関する報告をまとめた。少子高齢化の加速、保険料未納問題の深刻化によって制度維持が困難になりつつある状態を立て直すため、税方式への移行を求めた。その骨子は下記のとおりである。
・基礎年金の財源を保険料から全額消費税に置き換え
・税率の上げ幅は5%前後。置き換えで全体の負担に増減は生じない
・月額給付は満額で6万6000円
・国内居住10年程度を支給要件に
・移行期間は旧制度に基づく保険料負担を給付に反映
・年金課税を強め高所得者への給付抑制
・3.7兆円の企業負担軽減分は非正規労働者の厚生年金への加入拡大に
注3)
麻生太郎衆議院議員・自由民主党前幹事長は月刊中央公論3月号に「消費税を10%にして基礎年金を全額税負担にしよう~これが安心を取り戻す麻生プランだ!」を寄稿。「国民に安心を与えるのが政治の責任。抜本改革しか、国民の信頼を取り戻す術はない」とし、(1)杜撰な加入記録、(2)破綻している年金財政という2つの問題を解消するために、基礎年金の運営を全額税方式に改め、税負担の財源には消費税を増税して充当すべきだと提案する。その骨子は下記のとおり。
・消費税を段階的に10%とし、約13兆円の財源ができる
・国民年金の保険料負担(月1万4000円程度)はなくなる
・サラリーマンは基礎年金保険料を支払わなくて済むようになる
・将来の無年金の解消も可能になる
・これまで保険料を支払ってきた人の分は記録し、それに応じた金額を プラスアルファ分として支給、公平性を担保する
<後編に続く。後編は3月14日公開の予定です>
第18回 | 基礎年金「全額税方式」案に潜む問題点 (2008年03月07日) |
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