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2008年03月07日 週刊ダイヤモンド編集部

基礎年金「全額税方式」案に潜む問題点

駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授に聞く(前編)

 しかし、1~3号まである基礎年金(国民年金)のうち、払っていないのは1号の話。2号や3号はほとんど皆が払っている。サラリーマンのグループは、ちゃんと払っている。公的年金の全加入者7000万人を分母として考えれば、未納者というのは、どんなに多く見積もって計算しても10%前後となる。厚生労働省の定義にそって厳密に言えば5%だ。

 要は全体としてみれば9対1なのである。9割は払っていて、1割が払っていない状態を「破綻」と言うべきなのか。1割の人を助けるために、9割を犠牲にすべきなのか。まず、この点に異議を唱えたい。

――全額税方式が支持される第2のポイントは、消費税でした。

 消費税を、高齢化社会に対応する財源として位置づけるのは当然のことだろう。他の税を増税するよりはいい。給与課税のように、企業行動や個人の働き方に影響を及ぼすようなこともない。日本の消費税率は他先進国に比べ極端に低いし、消費税をいずれ上げるという流れは必要だろうと思う。

 ただし、である。消費税財源を充てる優先順位の第1が「年金」で本当にいいのか、と問いたい。

――高齢化社会への本格突入で介護、医療にももっとお金がかかるようになる。社会保障全体に目を向ける必要があります。

 消費税を社会保障目的税と位置づけて、介護、医療、低所得者向けの対策、少子化対策などに分けて投入し、今壊れかけている社会保障制度の支えとするのはいい。優先すべきはこちらであって、基礎年金ではない。

 考えてみてほしい。全額税方式で、高齢者全員に満額の月額6万6000円を支給するということは、弁護士や開業医であろうと大企業OBであろうと税金を投入する、ということになる。

 生活が苦しい高齢者はいいだろう。だが、裕福な高齢者をも含めて、一律でお金をばらまく必要はないのではないか。そのぶん、医療や介護をカットしていいのか。ここが最大の問題だ。お金は限られている。消費税でもって基礎年金だけを守る必要はない。

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)

<次ページに編集部注> 

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