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「実際は年間1400億ドル」米国防総省、08年度「中国の軍事力」発表
【ワシントン=古森義久】米国防総省は3日、2008年度の「中国の軍事力」報告書を発表した。同報告書は中国が不透明な体制で軍事力を大幅に増強し、台湾制圧の能力を短・中距離ミサイルの1000基以上の配備で高めるほか、海軍力の強化で尖閣諸島の領有や東シナ海の権益をめぐる紛争への対処能力を高めている実態を伝えている。中国は米国本土に届く長距離核ミサイルの強化や航空母艦の開発にも着手しているという。
毎年、米国議会に提出される同報告書は、中国が近年、一貫して軍事力の大幅な増強を進め、2007年の公表国防費は前年より19・47%増の約500億ドルだが、実際の軍事費は年間1400億ドルにも達すると述べた。
中国の軍備拡張の目的について同報告書は「自国防衛の消耗戦から遠隔の地での領有権や資源の獲得を争う戦いを遂行する能力の保持を目指す」とし、東アジア地域からグローバルな規模へと向かう「台頭する軍事パワー」と特徴づけ、「東アジアの軍事バランスを変え、アジア太平洋を越える意味を有する戦略的能力を向上させている」と評した。
同報告書はまた、中国の軍事態勢が秘密にされ、その増強や背後にある戦略の実情が不透明のままだとし、こうした実態が国際社会での中国への懸念を強めていると述べた。
同報告書は中国の軍事力の目的として台湾攻略や米国との競合、その他の国家主権の発揚をあげ、日本との尖閣諸島の領有権紛争や東シナ海でのガス田開発をめぐる排他的経済水域(EEZ)の権益争いの軍事的解決をもその主目的の一つとして指摘した。
同報告書は中国のこうした目的の下での具体的な軍備増強行動として(1)
福建省地域で短・中距離の弾道ミサイルCSS6やCSS7の配備増強を続け、その数は合計1000基を超えた(毎年合計100基の割で増えてきた)(2)米国本土に届く大陸間弾道核ミサイルのDF31などの質を向上させ、数を増やしている(3)航空母艦の自国での建造に着手しつつある(4)昨年1月の自国の宇宙衛星破壊実験で成功したように、宇宙への軍事がらみの進出に積極的になってきた(5)「宋」や「元」などの新鋭潜水艦の開発から建造に力を注ぎ、海軍力増強のペースを高め始めた(6)空軍でもSU30MMKやFB7Aなどの攻撃機にB6機を加え長距離の爆撃や攻撃の能力を高める−などという諸点を報告した。