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本当にエコなの? LEDの誤解を考える
液晶のバックライトから高級車のテールランプ、そして信号機などなど、各所で目にするようになったLED。しかし照明用途のLEDの現状は、そして課題は何なのか。
[斎藤健二,ITmedia]
LEDというと皆さんはどんなイメージを持っているだろう? IT分野ではLEDを液晶のバックライトに使って省電力などというニュースがあったり、非常用ライト用の光源として長寿命、低消費電力とうたわれていたりするのをご存じかもしれない。信号機もLED化が始まっているし、高級車のテールランプなどにも使われ始めている。
では白熱灯や蛍光管などに代わる、照明としての用途ではどうなのだろうか。
実は蛍光管のほうが省エネ?
省エネかどうかは発光効率を見ると分かる。これは電気がどのくらいの率で光に変わるかを示すもので、光にならなかった分はたいてい熱に変わる。これによると白熱灯が1ワットあたり10〜20ルーメンなのに対し、LEDはワットあたり最新のもので100ルーメン程度と高効率。しかしいわゆる蛍光灯──熱陰極型蛍光管(ねついんきょくがたけいこうかん)は110ルーメンにも達する。
「実は現在のところ、蛍光管をLEDに取り換えるメリットはあまりないんです」。3月4日に東京ビッグサイトで開幕した「LED Next Stage」にて、東芝や松下電器から返ってきた答えだ。
「現状は蛍光ランプで置き換えられない形状がLEDランプの用途」。そう話すのは、「T.LEDs」のブランド名で既存の電球の口金にはめ込んで使えるLEDランプを展示していた東芝。ミゼットレフ形やスポットランプ形など、指向性あるランプの置き換えとしてLEDを用意する。これまではまだまだ暗かったが、2007年末に投入した新製品では40ワット相当(白熱電球の40ワット相当の明るさ)を実現した。
一方「光の質の違い」をうたっていたのが松下電器。実は同じ白色の光でも、光源の種類によって違いがあることをアピールしていた。白熱電球の光の多くには赤外線が含まれ、当たったものを暖めてしまう。商品や美術品などに白熱電球を使うとこの熱によって劣化する。一方蛍光管には紫外線が含まれ、変色など化学的な劣化を引き起こす(蛍光管はそもそも紫外線を光に変えている)。
LEDの場合は出てくる光はほぼ可視光でこうした劣化を起こさない。「色味もきれいだ」(松下電器)。ちなみに照明に使うLEDは疑似白色ともいわれる。これは青色LEDに黄色のフィルターを付けると、人間の目には白色に見えることを応用しているからだ。
寿命4万時間?
LEDの特徴の1つが長寿命だ。蛍光管が1万5000時間程度なのに対して、LEDは2万〜4万時間を各社ともうたう。しかし実際のところは、定格電流で使う限り、LED素子自体は半永久的に持つのだという。
「LEDランプの寿命はほぼ電源ユニットの寿命。そのため口金に差し込むタイプは2万時間だが、一体形『E-CORE』は4万時間」と東芝。
ではLEDを使った照明の課題は何なのか。東芝も松下電器も“熱”だと話す。「LEDは熱で劣化する。80度くらいが上限。うまく放熱してあげなくてはならない」(松下電器)
明るくしていくと熱が出るが……
東芝によると一般の照明用に必要とされる明るさはほぼ60ワット相当。照明用ランプの57%が60W相当のものなのだという。LEDで明るさを確保するには、流す電流を増やす、LED素子をたくさん敷き詰めるという方法がある。しかしいずれも問題は熱だ。
白熱灯や蛍光管は、手で触れなくなるくらい熱くなる。LEDも光らせると自体が熱くなるが、80度程度という比較的低温でLEDが劣化し始めるという。例えば東芝の口金交換タイプはLED素子が6つ。これ以上素子を入れ込むと、明るくなるが代わりに熱が溜まってしまうという。「たくさん集めてしまうと熱くなる」と松下電器。いかにうまく放熱するかがポイントなのだと話す。
とはいえ、この問題も急速に解決するかもしれない。LED素子の改良は日進月歩で進んでおり、発光効率がアップしているからだ。発光効率が上がれば、光の量が増えるだけでなく熱も減る。明るさと熱という2つの問題が一気に片付く。
普及が進めば価格もこなれる。現時点では、蛍光管の4倍程度の価格。寿命も約4倍なので、メリットとしては「頻繁に交換しなくていい」(東芝)と言うにとどまるが、価格が下がれば、長寿命のメリットがさらに生きる。
LED照明推進協議会によると、ワットあたり100ルーメンを超える発光効率のものが普及する2010年には商業施設を中心にLED照明が普及を始め、オフィスや住宅に普及するのは2015年と見込まれる。毎晩お世話になる照明。その種類にも少しだけ目を向けてみると面白い。
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