危険な米国の大幅利下げ2008年03月07日 ドル安が進んでいる。米FRBのバーナンキ議長が議会証言で、インフレ懸念はあるが、景気の悪化がより深刻、として引き続き利下げの用意があると表明したのがきっかけだ。 しかし、市場の動きを見る限り、米国での利下げはここまであまり効果を発揮していない。特にクレジット市場では企業の信用力が低下しているために、民間企業が発行する社債と、政府が発行する国債との利回り格差が著しく拡大している。このため、FRBが大幅な利下げを実施したにもかかわらず、企業の調達金利はむしろ上昇しているところも少なくない。信用不安が広がる中では、利下げ効果には限界があり、資本対策など信用強化策が必要だ。 それでも利下げにこだわると、ドルの一段下落からインフレ圧力が高まる。世界一の債務国である米国としては、家計も政府もインフレで借金が軽減されるメリットがある。しかし、裏を返すと、日本や中国など、ドル資産を大量に保有している国は、ドル資産の大幅な目減りで大きな損失を被ることになる。 そうなると、ドル資産投資は敬遠され、むしろドル資産の処分売りから一層のドル離れを誘引する可能性がある。その場合、米国の長期金利は大幅な上昇を見、投資を中心に景気が冷やされ、半ば強制的な縮小均衡を余儀なくされる。その影響は周辺国にも及ぶ。 既に、米国の大幅利下げで困惑している国が少なからずある。中東や香港など、為替をドルとリンクさせている国・地域は、自らにインフレ圧力があっても、為替を維持するために、米国と一緒になって利下げをしなければならない。住宅価格が上昇している香港では今般の利下げでバブル現象が生じており、中東のなかにはドルとの関係を絶つことを検討する国も出てきた。米国の利下げには、ドル安の副作用がますます大きくなっている。(千) PR情報バックナンバー |
ここから広告です 広告終わり ここから広告です 広告終わり 株価検索どらく
ハイビジョン動画
一覧企画特集
特集
朝日新聞社から |