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日中今昔ものがたり/ギョーザ(3)

2008年03月06日

ギョーザは中国東北部が発祥地とされる。平凡社の「世界大百科事典」によると、満州族が清朝を樹立した時に持ち込んで全土に広まった。中国では水ギョーザと蒸しギョーザが中心だ。

「ギョーザはみんなの幸せを包むものだ。晴れの日に、家族そろって作るのが習慣だね」

仙台市太白区に暮らす中国残留孤児の庄司道孝さん(69)は戦時中から約40年間、中国・黒竜江省で暮らした。ギョーザはお祝い事に欠かせなかったという。2月17日には市内で開かれた中国の旧正月・春節を祝う会に参加し、ギョーザ作りの輪に加わった。

この日はキャベツ、大根、長ネギで具材を作り、調味料として塩と山椒(さん・しょう)、コショウを使った。直径3センチほどにちぎった小麦粉を棒で引き延ばし、皮作りから始めた。本格的な一品を前に、庄司さんは「ニンニクは味がきつすぎるので使わない。そこが、日本のギョーザとは違うんだ」と誇らしげだった。
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日本風の焼きギョーザを作るには、ネギやニンニク、キャベツ、ニラなどが必要だ。その食材の多くは中国からの輸入に頼っている。

農林水産省の野菜生産出荷統計によると、日本はネギを年間5万トン、ニンニク2万トン、キャベツ1万トンを輸入している。輸入元は100%中国だ。ニンニクは、国内市場に出回る商品の約6割(数量ベース)が中国産。日本貿易振興機構の統計では、日本に輸入される野菜・果実類のうち、中国産のシェアは約3割で、98年に米国を抜いてトップに立った。中国産の流通拡大の決め手は「安価」という点に行き着く。

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 魚のフライ、から揚げ、焼き鳥、お好み焼き、ロールキャベツ……。冷凍商品市場は戦後、急成長した。この40年で冷凍食品の消費量は34倍に増加した。輸入割合も急伸しており=グラフ(上)参照、今や国内消費量の5分の1は中国からの輸入品だ。冷凍ギョーザを含む「調理冷凍食品」に限ってみれば、中国からの輸入割合は6割を超える=グラフ(下)参照。

 長期保存ができて料理の手間も省けると家庭に広がった。「ギョーザに限らず、家庭で料理をする人が減った」と料理研究家・白井操さんは残念がる。「母親は働きに出て子供も塾で忙しい。料理を子供に教え、家庭内コミュニケーションを図るチャンスなんですけど」

 東北大大学院農学研究科の伊藤房雄准教授(農業経済学)は、輸入冷凍食品の増大が今回の冷凍ギョーザの中毒事件を招いた側面もあるとして、増大傾向に疑問を投げかける。

 「次世代もこうした食生活を続けて良いのか。安くて安全な食品が身の回りで手に入る仕組みを考えなければ。行政や農協の取り組む課題だ」

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