能登半島に北朝鮮の軍服を着た遺体が流れ着き、別の場所には小舟も発見されたという。工作員ではないだろうが脱北者との見方も強い 荒れ狂う冬の日本海にほんろうされて流れついたのだろう。仲間はいたのか。家族はどうしてきたのか。何カ月海を漂っていたのだろうか。本来ならば緊張感を持つはずの事件だが、悲惨な遺体の状況に哀れさがぬぐえない 北朝鮮が日本人を拉致したのは波穏やかな夏か初秋の日が選ばれた。一方、工作員が日本に密入国するのは晩秋から三月にかけて大しけが続く日が多かった。二年前に福井県警が公表した若狭湾に漂着した三人の北朝鮮工作員の遺留品が、工作員のおかれた立場を残酷に物語っていた ポケットには金日成主席の写真入り手帳、貴重品のガムとたばこ、乱数表。韓国沖で難破した工作船では潜入に失敗したときに自殺する薬の小瓶もあったといい、九人もの遺体が上がったことがある 冬の能登半島への小舟漂着は珍しくなく全国的には小さなニュースかもしれない。が、このところ静か過ぎる拉致問題を考えると、少しは日朝間を揺り動かす力にならぬものかと思う。
|