介護職の「普通の生活を」 160万人が署名

 全国老人保健施設協会(全老健)の川合秀治会長は3月4日、舛添要一厚生労働大臣と額賀nu郎財務大臣に対し、介護職員の生活を保障してほしいとする約150万人分の署名とともに、職員の給与を保障できる介護報酬改定を求める陳情書を提出した。川合会長は同日の記者懇談会で、「日本の人口の80人に1人が署名したのはすごい数字。今後、(地方議会の)代議士の方などにも働きかけて現場のことを理解してもらいたい」と述べた。(熊田梨恵)

 川合会長は同日、全老健の各都道府県支部から集めた154万8,934人分の署名を財務大臣と厚労大臣宛てに提出。介護職員の給与水準が他産業に比べて低いことなどから職員の確保が将来的にも難しいとして、職員の給与を保障できるような介護報酬改定を求める内容の陳情書も併せた。阿曽沼慎司老健局長に、給与が低いために仕事を続けたくても現場を去ってしまう職員がいるなどの現状を訴え、「普通の生活」を介護職員に保障できるように介護報酬を改定してほしいと求めた。
 川合会長は記者らに対し、「埼玉県で実施していた署名活動を全国でやろうということになった。署名は施設職員からだけでなく、職員の家族や入所者の家族からの署名が多かった」と、地域も巻き込んだ署名活動だったと述べた。

■きっかけは職員の1枚の手紙
 「今の給料のままでは子どもを養うことができません。家のローンも払うことができません。介護職員の給与を保障してもらえるように署名活動をすることはできないでしょうか」―。

 昨年7月に全老健埼玉県支部に届いた、老健で働く男性からの1枚の手紙が署名活動のきっかけだったと、同県支部の吉田昇事務局長は語る。「どんな小さな火の手でも上げていかなければ変わらない」。すぐに介護職員の生活を保障するための介護報酬改定を求める署名活動を開始。理事たちから「無理だ」と言われながらも10万人分を目標に集め始めた。

 「施設職員だけでなく、地区の医師会や学校の先生方、地域の人たちなどが『私たちの大事な両親を預ける人たちの生活を保障してほしい』との思いのもとに動いてくれたことはありがたかった」。
 署名活動は地域に広がり、県を超えて北海道や九州などからも集まった。地区医師会の働きかけにより診療所や病院の患者などのほか、生徒の社会体験で施設に出入りする学校の教師たちも署名した。施設職員らも家族ぐるみで地域に活動を展開。父親は自分が勤める会社に、母親や妻は近隣住民、子どもは学校などに訴えかけた。
 9月に始めて2か月後、集まった署名は当初の目標を超える10万4,945人分になった。
 「一般の人も関心を持ってくれて、みなが一つの方向に向かって進んだことがこの数字になって表れた」と吉田氏は話す。県知事から国に働きかけてほしいとして、11月末に知事に署名を提出した。

 埼玉県の活動は全老健に波及した。署名活動を全国で展開することに全支部が賛成。2月末までに、すでに知事に提出している埼玉県や沖縄県なども合わせると、166万3,501人分の署名が集まった。
 全老健は地域の支部長に対し、党派を問わず議員たちに訴えていくよう求めるなど、集まった署名を全国的な動きにしていく構えだ。

 厚労省は今回の署名と陳情書の提出に対し、「次回の2009年度の介護報酬改定のため、現在介護サービス事業所の経営実態を調査している。今後、実態を把握して分析した上で、介護給付費分科会で議論してもらいたい」と話している。

 一人の介護職員が願いを託した手紙が160万人の署名になった。国が現場の思いに応えるかどうかは09年度に実施する次回の介護報酬改定にかかっている。

■介護職の平均年収は211万円に減
 厚労省の調べでは、現在介護福祉分野で働く人は328万人。高齢者分野197万人、老健施設19万886人が働いている。介護職員の月額平均給与は20.8万円などで、全産業の33万円に比べて低くなっている。福祉施設職員に決まって支給する現金給与の年額の推移を見ると、02年の232万2,000円をピークに減少、05年には211万3,000円に落ち込んだ。老健の離職率は22.7%と、全産業の17.5%に比べて高く、介護現場職員の厳しい労働実態がうかがえる。


更新:2008/03/06 10:20     キャリアブレイン

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