岡山県南の児島湖といえば汚れたイメージが強い。全国の湖の中でも水質の悪さは上位だ。
岡山市や倉敷市などから河川が流れ込み、流域人口は六十万人以上と県人口のおよそ三分の一を占める。しかし、児島湖へ行った人は案外少なく、十代にいたっては大半が足を運んだことがないというアンケート結果もある。
児島湾の一部を締め切って一九五九年に完成した人造湖である。先人による苦闘の干拓事業で生まれた農地を塩害や高潮から守り、農業用水を確保する目的のために造られた。自然湖とは異なるコンクリート護岸などが、親しみを覚えない要因になっているのかもしれない。
現状に危機感を抱く環境団体・児島湖流域エコウェブがまとめた「児島湖読本―どっこい生きている児島湖」を読んで、児島湖を愛するたくさんの人たちがいることを知った。行政や地域住民らが浄化活動に取り組み、子どもたちの環境教育の場にもなっている。
児島湖は閉鎖性水域だ。どうしても水の循環が悪く、水がよどめば水質の悪化を招く。しかも、流れ込む河川流域は都市化の進展で生活排水などが増える。児島湖の抱える恒常的な課題である。
実際に訪れてみると、鳥や植物は多く自然豊かだ。どっこい児島湖は生きていると実感するが、人間の造った湖は、生かし続ける責任があることを忘れるわけにはいかない。