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【主張】社保庁勤務評価 これでは新機構も危うい
社会保険庁が昨秋行った職員の勤務評価で、年金記録のぞき見などで懲戒処分を受けたことがある職員を、5段階査定で最上位の「S」や2番目の「A」評価としていた。「懲戒処分は今回の評価期間外のことで、問題はない」というのが社保庁の理屈だ。
日本年金機構の職員採用基準を検討する政府の「年金業務・組織再生会議」が昨年10月にまとめた中間報告は、社保庁職員の移行について、処分歴を採否判断基準として重視するとした一方で、処分者のその後の働きぶりで採用される道も残した。今回の勤務評価が機構の採用判断材料となる以上、社保庁の理屈は通用しまい。
職員のデタラメな仕事ぶりが国民の信頼を損ない、社保庁解体を招いたことを忘れてはならない。問題職員が短期間だけまじめに仕事をしたからといって高評価を与えられ、新機構へすんなり採用されたのでは国民も納得できまい。新機構が真に国民から信頼されるには、懲戒処分者などを対象外とするのが常識ではないか。
社保庁の勤務評価の甘さは、今回が初めてではない。平成18年の勤務評価では、査定期間内に年金保険料不正免除・猶予で懲戒処分を受けた26人に「A評価」を出した。再生会議は中間報告で、勤務評価を抜本的に改善するよう注文も付けていた。にもかかわらず、今回の勤務評価が再生会議の提言後に実施されていた点を見過ごすわけにはいかない。
社保庁は昨年までの10年間で1343人が懲戒処分を、4844人が訓告や厳重注意である矯正措置を受けた。一方、労組からは「すでに行われた処分を採用基準にするのは二重制裁になる」との反発も出ている。
社保庁は万が一にも、「1人でも多くの職員を機構に移行させたいがために評価に手心を加えた」などと疑われることがあってはならない。ただちに評価手法を改めるよう求めたい。でなければ、社保庁の勤務評価を採用基準から明確に切り離すべきだろう。
採用基準の詳細は、5月に再生会議がまとめる最終報告をもとに機構の設立委員が定める。福田康夫政権は、機構が国民に信頼されることが、年金不信解消の絶対条件であることを肝に銘じてほしい。