アルジェリア空軍、受領済みのMiG-29をロシアに返却
2008-03-03, Y. Matsuo
図:(MiG)飛行中のMiG-29SMT、原型のMiG-29Bは1983年ソビエト空軍に実戦配備、以来改良型が現在も生産中。Su-27より小型で航続距離も短い。改良型MiG-29Sは、操縦系統の改善、燃料タンクの増量で、F-16と同水準になる。MiG-29SMは精密誘導爆弾攻撃が可能となり、Vympel R-77空対空ミサイル(米AIM-120AMRAAMに相当)を携行する多目的戦闘機となった。これを改良したのが[MiG-29SMT]、航続距離2,100km、コクピットは液晶表示パネル装備、携行爆弾は4.5㌧、エンジンはクリモフRD-33-3推力8.3㌧を2基。
アルジェリア空軍は旧型MiG-29を65機保有している。後述するが2006年に単座型のMiG-29SMT戦闘機を28機、複座型の練習機MiG-29UBTを6機、合計34機を13億㌦(1,300億円)で注文、同時に、現在保有している1990年代製造の旧型MiG-29のうち 36機を近代化改修で-SMT/-BMT並みにすべく5億㌦(500億円)で契約していた。
これまでに新型のMiG-29SMTを15機受領したが、この程ロシアに対しこの返却を申入れ、以後の受領を拒否すると通告した。申し立ての理由は品質に問題ありとしている。
すなわち、アルジェリア空軍が最初の改修完了機のグループを受け取ったところ、改修済みにもかかわらず搭載された「新型装備品」の中に1990年代初期製造のものが混在、さらに品質不良も発見した、としている。
製造元であるRSK MiG社は、近代化改修で搭載したアビオニクスおよび目標視認装置は全て新品で現在製造中の機器若しくはその派生型、と主張している。
(注)MiG社は、第2次大戦前にA.I.ミコヤーンとM.I.グレービッチの名前を取って設立された「A.I.ミコヤーン・M.I.グレービッチ設計局」だったが、1996年に民営化され[RSK MiG]社、すなわち「ロシア航空機製造会社MiG」となり、最近再び国有化された模様だが、名称は[RSK MiG]のまま。
アルジェリアは、これとは別にスーホイSu-30MKI(A)複座型多目的戦闘機28機を注文していて、最初の3機を昨年暮から1月に掛けて受領している。この程ロシアの兵器輸出局に対し、MiG-29の註文を取消し、その費用でSu-27と練習機ヤコーレフYak-130Aの購入を打診している。アルジェリアとロシアでは2006年に総額80億㌦(8,000億円)にのぼる包括的な兵器調達契約(海軍および陸軍用を含む)を結んでおり、この中で先のMiGおよびSu-30MKI(A)戦闘機の購入と共にYak-130Aを16機註文している。
事態を重く見たロシア政府とRSK MiG社は、MiG-29SMTの代わりに、現在インド空軍向けに売り込んでいる最新型MiG-35の採用を提案している。アルジェリアはこの数年、ロシアの兵器輸出先として急速に台頭してきており、この大きな顧客を失う事はロシアの貿易収支に少なからず影響を及ぼす事になる。
図:(MiG)RSK MiG社がアルジェリアにMiG-29SMTの代わりに提案しているMiG-35、これはMiG-29の発展型で、離陸重量が30%大きい22.7㌧となり、最新のAESAレーダ(Phazotron Zhuk AE型)と光学式視認装置(OLS = Optical Locator Sys)を装備、米国のF/A –18E/Fスーパーホーネットに対抗する性能を持つ。インド空軍で採用を検討中。まだ少数機しか製造されていない。
図:(MiG)MiG-35に搭載されるPhazotron製Zhuk-AE型AESA( = Active Electronically Scanned Arrey)レーダ、使用周波数を広帯域化し相手の電子攻撃に対する耐久性(ECM)を高めている。図の蜂の巣状の一つひとつが送受信素子。
図:(MiG)MiG-35のコクピット直前に装備されているのが光学式視認装置(OLS)センサ、OLSはロシアが開発したユニークな技術で、航空機前後の空中/地上目標をパイロットのヘルメット内に表示。センサは可視光線帯域だけでなく赤外線領域もカバー。原理的に電磁波を発射しないので探知されない。アフトバーナ無しの目標は45km以上、航空機形状は15km判別、地上目標は20km、発射ミサイルは50km以上で捕捉可能。ステルス機でもエンジン排気で感知可能。
References:
Aviation Week Feb 25 2008, page 34, Fulcrum Snaps
Flight 26 Feb-3 Mar 2008, page 12, New MiG-29 turned away by Algerian air force
Wikipedia Mikoyan MiG-29 24 Feb 2008,
Wikipedia Mikoyan MiG-35 28 Feb 2008,
Military Transformation May 10 2007, OLS-Optical Locator System on MiG-35
Aviapedia Apr 6 2007, New MiG-35 OLS