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野村ホールディングス(HD)は3日、グループの事業会社である野村証券の渡部賢一副社長が4月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格する人事を発表した。古賀信行社長兼CEOは、野村証券の会長に退く。氏家純一・野村HD会長は留任する。 「ここ10年ほど野村の経営は、同じような世代が動かしてきた。だが、人間は歳をとる。変貌する世の中に対応するには、布陣を入れ替えなければならない」。 東京・日本橋の本社で会見した古賀社長は会見の冒頭、こう切り出した。今回の人事におけるポイントは首脳陣の大幅な入れ替えにある。野村は、1997年に発覚した総会屋への利益供与事件で当時の主要役員が総退陣。当時は平取だった古賀氏や事件を契機に社長に就いた氏家氏のほか、97年に取締役となった戸田博史・現野村HD副社長、稲野和利・同副社長などが中心となる、いわゆる「トロイカ体制」で経営を担ってきた。 今回の人事で戸田氏、稲野氏は、野村証券の副会長職へ退く。一方で、野村HDの副社長兼業務執行責任者(COO)には野村アセットマネジメントの社長の柴田拓美社長が就任。従来のトロイカ体制から、事実上は渡部・柴田の「二頭体制」へと転換する。 過去10年あまりの期間は、野村にとって不祥事からの立ち直りとともに、株式委託手数料の全面自由化や従来は免許制だった証券会社が登録制に移行するなど、証券界にも大きな変化が起きた。野村も持ち株会社に移行。グループ名称を「野村證券グループ」から「野村グループ」に改称するなど時代の変化に対応してきた。「その体制固めから攻めに転じるときが今」と野村幹部は解説する。 新経営陣が直面する課題は大きく二つ。一つは、09年にも関連法令の改正が見込まれる銀行と証券会社間の業務隔壁(ファイアウォール)の緩和がもたらす国内大手金融グループとの競争激化への対応。もう一つは成長が見込まれるアジアをはじめとする海外で、欧米の有力な金融機関にどう伍していくか、である。 新しい経営体制は、それを見据えて組まれた布陣だ。渡部新社長は企画部門出身で近年では野村証券で国内営業部門のCEOを務め、「(業務を)国内営業部門にとどまらず広範囲に受容する力がある」(古賀氏)。柴田氏は海外での経験が豊富で「グローバルな見識を持った実力派」(野村幹部)。この2人が経営の陣頭指揮を執り、「変化に対応するにとどまらず、変化をつくっていく」(渡部新社長)経営を目指す。 なお、野村HD(米国会計基準)の今08年3月期業績予想だが、『会社四季報』08年1集(新春号)で予想していた税引き前利益の横ばい(3220億円)は、表記のように大幅減益予想に減額する。米国サブプライムローン(信用力が低い個人向け住宅融資)問題に端を発した金融市場の混乱で、米国で展開していた住宅ローン証券化事業において約1000億円の損失が発生。加えて、市況の混乱が長期化する中で、投資銀行業務なども振るわず、投資信託の増販では補えないのが理由だ。09年3月期については、市場環境の先行き不透明感は漂う。ただ、サブプライム関連の損失がなくなるため、税引き前利益は見かけ増益に転じると予想している。 【武政 秀明記者】
《東洋経済・最新業績予想》 (百万円) 営業収益 営業利益 経常利益 当期利益 1株益¥ 1株配¥ ◎本2007.03 2,049,101 ... 321,758 175,828 92.3 44 ◎本2008.03予 2,050,000 ... 200,000 120,000 62.8 34 ◎本2009.03予 2,000,000 ... 280,000 170,000 89.0 34 ◎中2007.09 1,147,160 ... 96,374 66,226 34.7 17 ◎中2008.09予 1,000,000 ... 140,000 85,000 44.5 17
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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