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インタビュー:不動産市況軟化でも積極投資、08年残高1兆円目標=GEリアル・エステー

2008年02月29日16時05分

 大林 優香記者

 [東京 29日 ロイター] 米ゼネラル・エレクトリック(GE)不動産投資部門の日本法人であるGEリアル・エステート(東京都港区)は、日本の不動産市況はまだ軟化すると予想しているが、今年は魅力的な投資案件が増えるとみて積極的な投資姿勢を維持する。

 同社の吉田奉行社長は26日に行ったロイターとのインタビューで、「4月以降はおもしろい案件が増える」と述べ、07年末に約7000億円となった同社の投資残高を今年中に1兆円に拡大するとの目標を据え置く考えを示した。

 また、同社が昨年出資した不動産投資信託(REIT)のエルシーピー投資法人<8980.T>の株価が低迷していることについて「具体的な内容は言えないが、対応策を考えている」と述べた。

 <日本の不動産は依然魅力的>

 吉田社長によると、米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題の影響で、積極的な貸し手であった外資系投資銀行などの商業用不動産ローン担保証券(CMBS)部隊の動きが止まったほか、邦銀も不動産向け融資で選別姿勢を強めており、不動産市況は「昨年8─9月をピークに徐々に変調を示し、年が明けて下落に拍車がかかった」。「ローンの出し手による不動産の値付けが弱くなったことが一番の影響」。さらなる値下がり期待から投資家の間で様子見気分が広がっており「市況の悪化はもう少し続く」という。

 ただ、GEを含む海外投資家にとって「日本の不動産は依然として魅力的で投資意欲は強い」。このため、大幅な価格下落は予想していないという。

 不動産投資家が投資価値の判断基準とする期待利回り(キャップレート)と資金調達コスト(長期金利)の差を示すイールドスプレッド(収益率格差)で日本は海外に比べ「十分利ざやを稼げる」状態で、カントリーリスクや経済の下振れリスクも低い。このため、グローバルな投資家は日本の不動産についてファンダメンタルズは底堅いとの認識を共有しており「昨年上がり過ぎた価格が修正されれば取引は活発になる」という。

 吉田社長によると、特に積極的なのはGEやシンガポール政府投資公社(GIC)など潤沢な資金を持つ長期投資家。実際、GICは最近ウェスティンホテル東京を770億円で買ったばかり。このほか、米国への投資分がドル安で痛んだ欧州や中東の機関投資家が日本への関心を強めている。同社長は、国内勢でも信用力の高い大手不動産会社は積極的な買い手になると予想している。

 <投資の好機到来へ>

 GEリアル・エステートは昨年、3500億円の新規投資を計画していたが、実際は約500億円の不動産融資と約2000億円の不動産投資にとどまった。利益確定のため売却した約1000億円の資産を差し引くと、投資残高は前年に比べ約1000億円増えただけだった。

 それでも吉田社長が以前から目標としている「08年中に残高1兆円」を変えないのは、有望な投資案件が出てくると期待しているためだ。サブプライム問題に伴う信用収縮の余波で資金難になったり、REITへの販売シナリオが崩れたりした中小不動産会社などが物件を売却する公算が大きく「9月か来年3月かはわからないが、いいオポチュニティーが来る」と予想する。既に「REIT用に買っていた不動産をREIT上場がなくなったので買って欲しいとの打診などがきている」という。

 マネーの蛇口が細ったことで高いレバレッジをかける買い手が減り、価格競争が和らぐこともGEにとってはプラス。吉田社長は「マーケットが荒れそうな年はチャンスが多い。それを虎視眈々と狙って行く」と語った。

 <J─REITテコ入れも視野>

 J─REIT市場も1年前とは様変わりしている。海外投資家から売りを浴び、東証REIT指数はここ1年間で32%下落。GEが投資口ベースで35%保有するエルシーピーの株価も26%下落した。吉田社長は昨年、出資の狙いとして「不動産市況が悪化した場合の流動性確保と株価上昇による投資利益」をあげていたが、シナリオが狂った。

 対応策については「いろいろ考えている」と述べたが具体的な言及は避けた。同社長は「今は資金面などで困っているREITが多く、今年は様々な動きがある」とみており、GEとしてもエルシーピーに限らずREIT分野で新たな手を打つ可能性があると指摘した。

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