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「おまえは、嫌いだ」という男と付き合う

50年も生きていると、変(?)な経験のひとつやふたつある。

そのひとつ。
「おまえのことは嫌いだ」といわれているのに付き合い続けたことがある。
1年位したら、逃げられた。
数年後、会いたくなったので、元住所から戸籍そして戸籍の附票を取って現住所を突き止めて会いに行った。
相手は目を丸くしていた。
隣県で遠かったが、また、付き合いだした。
そして、やっぱり私のことは「好きじゃない」と言われ続けていた。

しばらくして、仕事が忙しくなり行かないでいた。
はじめて彼から電話が鳴った。
入院している。他にたのめる人がいない。洗濯しに来て欲しい。
わたしは、忙しくて行かれなかったので、かわりに妹をやった。
朝早くに東京を出て、駅から離れた病院にたどり着き、洗濯をして帰ってきてくれた。

数日後、今度は私が見舞いに行った。
腰椎の椎間板の手術をして大部屋のベッドに転がっている彼がいた。
病院のコインランドリーで洗濯をしている間、お昼になった。
まだ、据わることも許されていないので、
ご飯はおにぎりで、味噌汁はストローでのむ。
味噌汁の介助をしたが、看護師のくせに「へたくそ」と言われた。

また、しばらく行かないでいるうちにアパートを引き払っていた。
以前入手していた戸籍の住所が実家であると見当をつけて104で実家のTEL番号をつきとめて電話。
彼のお母さんが出た。

転居先の電話番号を聞き出して電話した。
電話のむこうでまた驚いていた。

退院後まだリハビリ中に実家のお父さんが亡くなり、這うようにして帰省してなんとか葬儀を済ませたが、実家でそのまま動けなくなり1ヶ月ほど故郷で過したがまた上京したという。

服を脱いだ彼の腹を見て涙が落ちた。すっかり痩せてしまっていた。そして仕事も失くして、母親の年金からいくばくかの送金をしてもらってやっと生活している有様だった。

何か。食べたいものはないか聞いた。
「(季節なので)さんまが食べたい。」と。

駅前の居酒屋で秋刀魚定職を食べさせて帰った。

次に行った時は、「さばが食べたい。」と言うので、コンビニのサバ寿司を買いに行った。

また数年たった。
新しい彼氏が出来たので、彼に電話した。
もう、行かないと。

すると、かわりに「女」を寄越せという。
知り合いの女性は?という私に、彼は
「『妹』がいい」という。



とにかく、そう執拗に言うので、
東京駅で妹に会わせた。

彼らは1年位付き合って別れた。

彼に電話して事情を聞いてみた。
妹に「そのオリコウサンの頭でこの状況(いい年して田舎の老母からの仕送りで生活している)をなんとかしなさい!」と叱られたそうだ。

今まで、誰にもこんな屈辱的な言葉を浴びたことはない「オリコウサン」だと!

小さい子供の頃から非常に賢い子だったそうだ。

わたしの妹は地方の短大を出て1年位で専業主婦として12年過して離婚し自活を目指している、ま、普通の「頭」を持つ女で、そのいわば「並」の「女」に「オリコウサン」とそしられて怒ったのだそうだ。

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