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医師コーディネーター導入で救急改善も、橋下改革の壁

2008年03月06日

 救急患者の受け入れ先が見つからずに手遅れになる事態を防ぐため、病院探しの「搬送コーディネーター」を各都道府県に置く国の事業が、4月にスタートする。妊婦の搬送遅れが問題となった大阪府と奈良県では、同様の取り組みが周産期医療の分野で先行的に始まっているが、誰がどう担うかで、実効性の明暗が分かれている。

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 大阪府は昨年11月、府立母子保健総合医療センター(和泉市)に委託し、「緊急搬送コーディネーター」を稼働させた。8病院のベテラン医師計15人が交代で調整役を担う。

 夜間や休日、病院や診療所で妊婦の容体が急変した場合、まず府内の43施設で作る「産婦人科診療相互援助システム(OGCS)」を使い、搬送先を探す。それでも見つからなければ、コーディネーターが母体や胎児の状態から適切な施設に個別に打診する。当直料は1晩7万円だ。

 これまでは、同センターの当直医が勤務の合間に電話で搬送先を探していた。1年間の実績は約100件。平均3.3病院に照会し、決定まで50分かかっていた。

 コーディネーター設置後は、ほぼ1回の打診で決まる。重症度判定が適切なことに加え、派遣元の病院が一義的に患者を受け入れるようになったためという。

 府は今後3年間にセンターの医師を増員して、調整役に充てる予定だったが、橋下徹知事の「新規事業抑制」方針に従い、08年度の暫定予算には計上されていない。同センターの末原則幸副院長は「医師がボランティアでするには荷が重い。4月以降はできない」と明かす。

 奈良県は昨年12月、県立医科大病院(橿原市)に「ハイリスク妊婦搬送コーディネーター」を置いた。10人を予定していたが、公募に応じたのは助産師3人、看護師1人の計4人で医師はゼロだった。

 配置は土日祝日に限られ、2カ月半の稼働日は24日間。搬送先を決めたのは1件しかない。ハイリスク妊婦は大阪に頼むことも多いが、大阪では症状を正確につかむため、医師同士のやりとりが原則になっているからだ。

 県は新年度も1800万円の予算を組んだが、同大学の小林浩教授は「コーディネーターは医師がやらないと機能しない。ただ、県内の産科常勤医は72人。この中から出すのは困難」と嘆く。

 新年度に周産期緊急搬送コーディネーター事業を始める滋賀県も、専任ではなく、大津赤十字病院の助産師らに業務委託し、手当を付ける方針だ。

 厚生労働省は、救急一般を扱う搬送コーディネーターについて、地域の救急医療に詳しい医師が基幹病院に当直して担うのが望ましいとの考えだが、一方で、「医師が少ない地域もあり、地域特性を考慮した運用を求めたい」(医政局指導課)としている。

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